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◆公式の小説を元に、ディーノの過去を題材にした話です。
小説を読んでなくても多分わかると思いますが;;読んだ方がわかると思います(笑)
ちょっと暗い話です。R18とありますが、そんなに絡みはないです…(笑)
先代が亡くなった際のディーノの心の闇を恭弥視点で書いています。
<一部抜粋>
大広間に辿り着きドアを開けようと手を伸ばすと始めから僅かに開いていて、軽く押しただけで静かに隙間が空いた。
部屋の中に気配を感じた。
入る前に中の様子を窺い、恭弥の鼓動が揺れる。中央のソファに1人居たのは、ディーノだった。
横から遠めに見える姿だったが、膝に肘をついて片手で頬杖をつき、空中をぼう…と見ている。
その表情は酷く疲れたもので、これほどに覇気がない姿を見るのは初めてだった。
恭弥の気配にも気付かないらしい。
珍しい様子に気を取られ、ふいに触れてしまったドアノブが、カチャリ…と音を立てた。
流石に気付いて、は…っとこちらを見る。
その顔はすでに元通りに戻っていて、恭弥だとわかると、にこやかに笑みさえ浮かべた。
咄嗟に取り繕う相手に、恭弥の胸にチクりと針が刺さるような感覚を覚えた。
思い返して見れば、あぁ言った弱い部分を見せた事がない気がする。
常に明るくて煩くて、自分へ向ける好意を隠さないディーノは作ったものだったのだろうか。
立ち上がり迎えようと身体を向ける姿は本当にいつも通りの彼で。
そんなに自分には見せたくないのかと、憤りを覚えた。
ツカツカと大股でディーノの元に歩くと、身体を思い切り突き飛ばした。
すると思いの他あっさりと身体はソファーに倒れこんだ。
「……っ、恭弥?いきなり何すんだ…」
「何故平気なふりをするんだい?」
肩を掴んでソファに押さえつけ、押し殺した声で問う。
ディーノはきょとん…と不思議そうな顔をしていた。
つい先ほどまで見せていた表情を自覚していないのだろうか。
「さっきまで、酷く疲れた顔をしていた」
「そうか?そりゃあ…少しは疲れてるが、平気だぜ?」
死にそうな顔をしておきながら良く言う…。
恭弥はぎり…と唇を噛み、ディーノの胸元に両手をかけて締め付ける。
「ぅ…、く…るしぃってば…恭弥…」
「取り繕うのも板に付いてるようだけど、僕にも本心を見せたくないの?」
「ぅぅ…、何の、…事だよ?…んとに大した事ねぇ…んだって、勘違い…だ」
尚も認めない言葉は、嘘をついているようには聞こえない。
もしかすると本当に無意識なのだろうか。
たとえそうだとしても腹立たしいのには違いなかった。
数ヶ月の間に少しは気を許したと思っていたのは自分だけだったらしい。
ぎりぎりと締め付ける手はそのままで、引き上げて身体を浮かし、噛み付く勢いで唇を合わせた。
胸倉を絞められて息もままならないのに、更に唇を塞がれては苦しさも増すもので。
ディーノは苦しげに顔を顰める。
「ん…っ、ぅ…ふ…、んン…く」
舌を口内に潜り込ませて唾液を絡ませれば、息苦しさとゾクゾクした感触が合わさってディーノの鼻腔から吐息が漏れる。
かろうじて鼻で呼吸をしていたが、深くなるキスに酸素が足りなくて、眉は寄る一方だった。
(このまま犯してやろうか…)
辛そうな顔を見て少しは満足したものの、腹立たしいのは持続していた。
再度ソファに押し付けるべくキスから顔を上げると、急に握っていた首元ががくんと重くなった。
その反動で手が離れてしまい身体はソファに沈んでいく。
驚いてディーノを見ると、眉間の皺は深く刻まれたままで目を閉じていた。
「…ディーノ?…ねぇ、…ディーノ…っ」
反応が無くなった事に焦りを感じ、ぺちぺちと頬を叩いても起きようとしない。
急に不安になって唇に耳を近づけると、僅かながら呼吸の音が聞こえ、どっと力が抜ける。
意識を手放したまま眠りについているようだった。
それにしても。
確かに首元を締め付けて圧迫したが、落ちる程に力を込めたつもりはなかった。
多少の手加減はしていたと言うのに。やはり相当疲れていたのだろうか…。
険しい表情のまま眠るディーノの眉間に指を当て、伸ばすように上下した。
それから何となく髪を梳いて頭を撫でてやると、すぅ…と表情が和らいでいくのを見て。
腹の奥で燻っていた苛立ちが消えていくのを感じる。
恭弥が見ていたのは日本に来た時のディーノだけで、彼の日常の姿は全く知らなかった。
いつもこれだけの負担を負っているのだろうか…。
それにしても、この消耗の仕方は半端じゃない気がする。
撫でている間は呼吸が落ち着いているから、恭弥は暫くの間何度も何度も、髪を撫でては梳いた。