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◆毎度そうですが、ファンタジーだと思ってください(笑)
炎の解釈や、リングとか捏造もいいとこです。
あと、霊に関しても詳しくないので。んな馬鹿な…、と思っても見逃してください(笑)
恭弥はほとんどが中身のみ。霊体の状態で居ます。
何故か今までで最長文です(笑)
<一部抜粋>
キャバッローネへ連絡が入ったのは、恭弥が行方不明になってから数日後の事だった。
帰国するはずの日に連絡が取れなくなり、草壁はボンゴレに捜索の応援を頼んだ。
どうせいつもの気まぐれだろうと、直に話を受けた獄寺隼人が適当に捜索して今日まで。
ボンゴレのネットワークを持ってしても、恭弥の消息は掴めなかった。
その現状にさすがに本腰を入れ始め、方々に連絡が回ってきたのだ。
とは言え他ファミリーであるキャバッローネに話を繋いだのは、恭弥とディーノの関係を知っているからに他ならない。
彼の恋人であるディーノに隼人は行く先を告げていないか聞いて来たが。
ディーノとて、頻繁に連絡を取っているわけでもなく「知らない」としか答えられなかった。
恭弥が消える事なんていつもの事だ。しかしボンゴレが乗り出して見つからないと言うのは、ただごとではない。
連絡を受けてディーノもまた捜索を始め、これで一週間になるが一向に成果は上がっていない。
「まだ、てめぇんとこにも連絡はねぇのか」
「あぁ…、何もないな。そろそろ1週間くらいか?さすがに…心配になってきた…」
「…あいつに心配が要らねぇのは、重々知ってんだろ?」
僅かながら沈んだ声でディーノが呟くと、隼人は舌打ちしつつもそう言った。
それが自分を気遣っての事だとわかり、ディーノが「ありがとな」と答えれば隼人は再度舌打ちをする。
気遣いがある癖に相変わらず素直じゃないな…。ディーノは声に出ないよう笑う。
「また情報があったら連絡するが…、そっちも何か掴めたらすぐに教えてくれ」
「わかってるっつーの。てめぇこそ見つかったからっていちゃついてねぇで、さっさと報告しろよ。十代目も心配なさっておいでだ」
あくまで綱吉の為に動いているのだろう。それが窺えて小さく笑みながら「わかってる」と答え電話を切った。
携帯を閉じて、ディーノは、ふー…と長い溜息をつく。
連絡が取れないのも、ふらりと居なくなるのも珍しい事じゃない。
恭弥は自由で捕らわれない性質を持っている。恋人だからと言って彼の動向を図りきれるものじゃないだろう。
だが…、それでも。
(メールくらいは返してくれてたのに…)
ディーノは再度携帯を開いて、最後に受信された恭弥のメールを見た。日付は丁度1週間前のものだ。
つまり、行方不明になる前日。
『仕事中。また連絡する』
ディーノからの『そろそろ会いたい』と言う内容(実際にはもっと長文だが)への素っ気ない返信だ。
だが恭弥は、自分がメールをすると何度かに一通は返事をくれる。
数日遅れる事があっても完全に無視された事は一度もなかった。
それなのに今はディーノの送信メールがずらりと並ぶだけだ。連絡を受けてから毎日送っているが、一向に返事は来ない。
『何処に居るんだ?』
『心配してる』
『連絡待ってる』
そんな文面がつらつらと綴られ、溜まっていく一方だ。
ディーノは新規作成画面を開くと、ここ数日の習慣になっているメールを打ち出した。
“は や く か え っ て き て ”
短い文を作成して送信ボタンを押し、携帯を閉じた。
それからベッドへ身体を投げ出す。額に両手を当てて長い長い息を吐いた。
どうしようもなく、不安が募っている。
離れていても大丈夫だと思っていた。会わない時なんて3か月でも空く場合もある。
恭弥の実力を考えれば心配が要らないのもわかっているが、今回は常と様子が違う気がした。
何故だか、今まで感じた事のない消失感がディーノを襲っているのだ。
メールの返信だけではない、感覚的な事だ。もう…同じ世界に居ないような…。そんな漠然とした感覚を覚えているのだ。
それは、つまり――…。
(駄目だって…、悪い方に考え過ぎだ。オレが信じないでどうする)
最悪の事を思い浮かべてしまい、ディーノは慌てて起き上がり考えを吹き飛ばすように、くしゃくしゃ…と髪を混ぜて頭を振った。
恭弥の身に何かあるなんて、考えられない。きっと何か、面倒な事に巻き込まれたか。気まぐれに飛び回っているだけなんだ。
だから早く、早く…。無事な姿を見せてくれ。
「会いてぇよ…、恭弥…」
* * *
それはとても耳に馴染んだ、心地の良い声だった。深く沈んでいた意識が、その声をもっと聞きたくて浮上して行く。
気になるのは、それが暖かい声ではなかった事。
寂しげな切なげな…、聞くだけで胸が締め付けられるような、そんな声。
それでも…自分にとっては愛しい、声。
“ ディーノ… ”
名を呼んで、は…っと意識がはっきりした時。恭弥は激しい違和感に捕らわれていた。
ふわふわ…身体が宙に浮いているような。何だか足元が心もとなくて仕方無い。
辺りを見回すと、そこはとても見慣れた部屋だった。
彼の屋敷に行くと必ず泊まる、彼の自室…、ディーノの部屋だ。それなのに何だろう、この違和感は。
(あぁ…、視界が異常に高い…?)
上から見下ろすような景色が目の前に広がっている。
そうだ、自分は浮いているのだ。知っている部屋であってもこんな高さから見た事はない、だからおかしいんだ。
夢でも見ているんだろうか。ベッドの方へ頭を巡らすと、ディーノの姿も見える。近づこうと思っただけで、すぅ…と視界が近寄った。歩いた感覚もない。
不思議な感覚に眉を寄せるも、恭弥はディーノの様子の方に気を取られた。
切なげに寄せられた眉。悲しそうな不安そうな…、そんな彼の表情はあまり見ないものだ。
どうしたんだろう。恭弥はその思いが強くなり、そっと彼の横に降り立つ。ベッドが軋む事もなく、ディーノもまた気づいていない。
やっぱり…夢なのかな。
何故かくしゃくしゃに乱れているディーノの髪に手を伸ばして撫でようとしたが。その手は彼の身体を通り抜けてしまった。
触れられない事に軽いショックを受ける。
(嫌だな…こんな夢。早く、目覚めたい…)
唇を噛み締め、恭弥は頭を振る。目覚める事が出来ないかと自分の頬を抓って見るものの、痛みも何も感じなかった。
肌には触れたという実感はあるのに感触が無い。どうしたものか…、恭弥は途方に暮れていた。
暫く思案していると、ディーノは携帯を持って何やらメールを打ち出していた。
興味を引かれて、恭弥は彼の後ろにふわりと進んで画面を見る。盗み見るみたいで気分は悪いが、夢だし…まぁ良いだろう。
宛先は「ツナ」となっている。なんだ、あの草食動物へのメールか。
『一向に恭弥の行方は掴めねぇ。さすがに心配だから本気で捜索しようと思っている。一度そっちに行って…』
内容文を読んで恭弥は首を傾げた。名前がはっきり書いてある、自分の事を言っているのだ。
僕の行方がわからないって?何を言っているんだろうか、僕は…此処にいるのに。
目を瞬かせていると、ディーノは物憂げな溜息をついて指を止め、携帯をベッドに放る。
送信は押していないようだ。
「本気で飛んでいけたら、どんだけ良いだろうなぁ…」
独りごちて、ディーノは寂しげに苦笑した。己の立場や現状から難しい事だったのだろう、せっかく作成したメールを消去する。
そしてまた沈鬱な表情に戻るのだ。
恭弥は間近でその顔を見て、焦燥に駆られた。
そんな顔…しないで。僕はここに居る、ねぇ…夢でも何でも、気づきなよ。
いつもまっすぐに自分に心を向ける彼が、こちらを見ない事に苛立ちを覚える。
両頬を包んで顔を向けようにも、触れる事は出来ない。声を出したつもりでも、どうやら音にはなっていないようだ。
「早く帰って来てくれ、恭弥…」
再びディーノの呟きが聞こえ、恭弥はぎり…と己の拳を握り締めた。
気づいて、気づいて…。こんなに近くに居るのに何でわからないんだ。
僕の存在に気づいてよ。ねぇ…
“ ディーノ…! ”
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