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◆シリアスメインです。短編集No3で3本入ってます。全て数年後の恋人設定です。
結局2本は最終的に甘いですが、1本だけは狂愛系の痛い話になってます。
ちょっと注意が必要かもです…。全体的に暗め。



★KEYWORD
 ボンゴレへ損失を与えたとしてディーノが牢屋に入れられてしまう。
 真実を解明する為に恭弥がディーノの元に向い…

・これは痛くはないかな。書きたかったのは牢屋H(笑)
 →抜粋文へ

★FREEZE
 恭弥の暴走でキャバッローネの部下が傷ついてしまう。
 ボスとしてやむを得ず、ディーノは恭弥へ制裁を加えてしまうが…

・最後までシリアスです。部下の皆さんが出張ってます。
 らぶらぶな話ではないです。二人の絡みが少ないかも…、しかしHはしてます(笑)
 →抜粋文へ

★MIND BREAKER
 ディーノが仕事でsexしている事を了解していたものの、それを目の当たりにした時、
 恭弥は怒りを抑えられなかった。
・この話は救いがないです、痛い話しなのでご注意を。
 危険だと思う方は最後から5ページくらい読んだら大丈夫かどうかわかります(笑)
 ただし、完全にネタばれになります(笑)
 →抜粋文へ















<文章一部抜粋>

KEYWORD

「ワォ…、中々似合ってるね、その場所も」

最悪のケースを考えてディーノが項垂れていると、唐突に声が掛けられて、びくりと肩が震えた。
その低い声は馴染みすぎる程に慣れた声。顔を上げるまでもなく誰かはわかっている。
幾ばくかは予想していたものの、まさかこんなに早く来るとは思わなかった。

「…お前を呼んだか、恭弥」
「あなたが馬鹿な真似をしていると聞いてね、僕なら口を割るかも知れないらしいから」

綱吉はとっくに自分が隠し事をしている事など気付いているのだろう。
先に言ったようにディーノ自らが指示をしてボンゴレに損失を与えるなどあるとは思っていない。
自分に言えないなら、と。ディーノへの切り札として恭弥を呼んだのだ。

飛び回っている彼の事だから、そう簡単には来ないと思っていたが…。
仕事帰りなのかスーツ姿のまま、恭弥は鉄格子に指をかけ揶揄るように口端を上げる。

「どうせ部下を庇ってとか、わかりやすい理由だろ?」
「……何処まで聞いてる?」
「――キャバッローネがボンゴレのネットワークに侵入し、不利益な情報を敵対しているファミリーに流した。
その真意を問う為にあなたが連行された、と」
「…ま、その通りだな」

自分が認識している事とさほど変わりがないのを確認すると、溜息をついて壁にもたれる。
鉄格子越しに見ていた恭弥は、手応えのない反応につまらなさそうに目を細めた。
そして、持っていた鍵で牢屋の中に入り、ディーノの目の前に立って見下ろしてくる。

「嘘はもう少しマシに吐くものだ。あなたが指示したなんて、信じるわけないだろ」
「お前やツナはな、…でも周りはそうじゃないだろうさ」
「わかってるなら、さっさと本当の事を言いなよ。このままだと、死ぬよ?」
「……それは困るけどなぁ…」

たとえ真実はどうあれ、ボンゴレは裁きを下さなければならない。
実際損失を被ったのは確かだ。いくら親しい間柄だからと言って、ここでディーノに甘くしては周りに示しがつかないのだ。

恭弥は浮かべていた笑みを消して睨みつけている。その視線は「さっさと白状しろ」と言っているようだ。
このまま黙っていれば、遅かれ早かれディーノの身の安全が保障されない。
それを心配してくれているのもはわかっていたが。簡単に崩せない理由がディーノにだってある。

「言えないなら、言いたくなるようにしてあげようか」
「…お前、拷問役も買って出たのか?」
「あぁ。その名目があれば、楽しそうだ…」

心情まで見透かされそうな恭弥の視線から顔を反らすと、彼は低く言いながら膝を着いた。そしてディーノの顎を乱暴に掴む。
無理矢理視線を合わせられて声色から怒っているかと思いきや、恭弥の瞳は静かなままだった。
意外そうに目を瞬かせどうしたのかと問おうとすると、ディーノの唇に人差し指を当てて言葉を制した。
それから唐突にディーノの下肢に手を這わせ、中心を握る。

「…っぅ…、拷問って…こっちかよ…」
「あなたには堪えるんじゃない?…此処の音は全て収集されている。恥ずかしい声を聞かれたくなかったら、早々に吐く事だ」
「だから…、オレの指示だって…言って…、ちょ…待て…っ」

牢屋内の音が聞かれているとわかりディーノは緊張を強めた。
良かった、恭弥だけだと思って口を滑りそうだったけど。教えてくれたから気が緩む事も無さそうだ。

(ん…?教えてくれた…?)

わざわざ自分にそれを聞かせたように思えて、ディーノは視線を上げる。
すると恭弥は胸ポケットから手帳とペンを出して床に放った。
その行動に目を見開くも、意図する所はすぐに察する事が出来た。

なるほど…、自分だけには教えろと、暗にそう言っているのだ。
そして、きっと。そうすれば何とかしてやる…、そんな思いも伝わってきた。





★FREEZE

宿泊しているホテルに向かうと、ディーノはロマーリオを帰らせた。
心配げにしていたが、1人じゃないと会わないと言うのだから仕方ない。
聞いていたNoの部屋に向かい、ドアの前で一呼吸してインターホンを鳴らした。

多少緊張があるのは、常のように気楽な逢瀬じゃないからだ。恭弥はその事を意識しているのだろうか…。
暫く待っているが全く応答がないのに眉を寄せる。
ドアノブを回すと鍵がかかっていなくて。逡巡したものの約束はあるから良いかと思い、ディーノは中に入る。

寝ているか電話か何かで出れないのかと思いきや、恭弥は入ったすぐの部屋奥、全面のガラス窓の前で外を眺めていた。
入室も気づいているはずなのに振り返ろうともしない。
ふぅ…と一つ溜息をつくと。ディーノはその後ろまで歩み寄る。

「…わざわざ草壁経由で、何の用?」

ディーノが声をかける前に硬質な声が響いた。低く冷たい声はいつ聞いても友好的には思えない。
普段と変わらないようでもあるが、ディーノは気づいていた。随分機嫌が悪いようだ。

(重い気分なのはこっちの方だ…)

すでに確信に変わりながら、ディーノは穏やかに終われなさそうな事に嘆息した。

「わからないか?1週間ほど前…お前、ディスターレファミリーのアジトに居たな?」
「さぁ?いちいち群れの名前なんて知らないな」
「とぼけるなよ、周辺地の目撃情報があるんだ。抗争中だった奴らのアジトに乗り込んで、匣を使って暴れたのはお前だろう」

さらりとかわす恭弥にディーノは詰め寄り、続けた。すると後半の部分でぴくり…と窓に触れていた指が動く。
ゆっくりと振り返ってこちらを見る瞳は驚くほど無表情で、ディーノは目を見張る。
常に恭弥を知っているものなら馴染みもあるだろうが、最近の自分に対する視線ではあまり見ないものだ。
己に対して感情を抑える必要などなく、怒りにしろ思慕にしろ何かしらが浮かんでいたというのに。

「なるほど。僕に絞ったのは匣の痕跡からか。…あなたにはちゃんと見せていなかったと思ったけど、知っていたんだね」
「ツナから聞いていたからな。…ボンゴレの依頼を一度断ったはずなのに何故行ったんだ」
「――別に、行く気になったから行った、それだけだ」

淡々と答える恭弥に感情は浮かばない。
機嫌が悪いからだろうか…、それとも内容から一個人として対応していて、親しい関係での感情を消しているのかわからないが。
今の彼は公式の場で見せる、冷淡な『雲雀恭弥』の顔をしている。

そういう態度で来られると、ディーノとしても感情を消すしかない。
私情は挟まないとは言え多少の甘さはあったのだ。
悪びれる欠片も見せない相手にそれが消えていき、キャバッローネボスとしての怒りが燻る。

「あの場所にうちの奴らが居たのは知っていたか?お前の無差別の攻撃のおかげで、随分痛手を受けたんだがな」
「…さぁね。…同じ場所に居る方が悪いんだよ」


〜 中 略 〜


「いい加減にしろ…!」

怒りのまま恭弥の胸元を掴んで、だん…と力強く窓に押し付ける。
恭弥は苦しげに眉を寄せるが、己に向けられた常には見ない強い視線を真っ向から受け止めた。
胸倉を鷲掴みにしているディーノの手首を掴むと、細身の体躯からは信じられないほど強い力で横に引かれる。

離すまいと力を込めていたが、唐突に足払いを掛けられて手の力が緩んだ。
バランスを崩した身体を思い切り床に倒され、肩を強打した衝撃にディーノは顔を顰めた。
部下を連れてくるべきだった…と思ってももう遅い、ディーノの片腕を掴むと背中に回して、うつ伏せに床に押さえつける。

「っ…ぅぐ…、離せ…!恭弥…っ」
「…もともと、機嫌が悪かったのに。あなたのおかげでそれが増したよ。
くだらない用件に付き合ったんだから、今度は僕の解消をさせて貰う」
「くだらないとは、何だ…っ敵味方の区別も付けられないのかお前は…!」
「味方?そんなもの僕には居ないよ。たかが新参者の部下一人に、何をそんなに興奮しているの」
「そう…言う問題じゃないっ、…っく…、離せ…このっ」

体制を変えようともがくが、うつ伏せに腰に跨がれては軽いとは言え簡単に退けられるものではない。
暴れるディーノの背中に回した腕を、グイと上に引き上げる。あり得ない方向に曲がって軋む関節に苦痛に顔が歪んだ。
痛みに一瞬気を取られた隙をついて、恭弥はネクタイで後ろ手に腕を結んだ。





★MIND BREAKER

約束はしていなかった。
宿泊しているホテルの付近でたまたま用事があったから、立ち寄っただけだ。
行く前に連絡をするような気遣いは持っていない。そんな事をしなくても、何時も快く向かえるのが彼だ。
それなのに今夜は様子が違うらしい。

唐突に来訪した恭弥を出迎えるディーノの表情は芳しくなかった。
表面上は繕っているものの、色濃い疲労が滲み出ているのだ。
珍しく「今日は少し疲れてるんだが…」と拒むのを匂わすのにも関わらず、恭弥は身体を押し退けて中に入る。
すると、無理に追い返すつもりもないのか、気だるげな溜息が後ろから聞こえた。

ディーノは仕事から帰ったばかりなのだろう、スーツのジャケットすら纏ったままで、我が物顔でソファに座る恭弥に視線を送る。
普段ならここでディーノから色々話しかけてくるものだが、その気力もないのか暫く沈黙が続き。
彼は疲れた顔をしたままネクタイを解いてジャケットを脱いだ。

窮屈な首元が緩むと、ほ…と息を吐いて、その様子を横目で眺めている恭弥に「ワインでも飲まないか?」と話し掛けてきた。
特に飲みたいわけでもなかったが、相手がべらべらと話す気分では無い事を悟ると、見上げてから軽く頷く。

ディーノは戸棚からグラスと瓶を持ち出し、手馴れた手付きでコルクを抜いて赤い液体を双方のグラスに注いだ。
早速手を伸ばして口を付けるディーノをちらりと見て、恭弥もグラスを取りくるくると液体を回していた。
もともと洋酒はそこまで好みではない。
彼に付き合って多少は嗜むようになったが、進んで飲みたいものでもなかったから、手遊びに揺れる液体を眺めていた。

「……すげー、良いワインなんだぜ?それ…。多分恭弥にも合うはずだから飲んでみろよ」

自分はと言うと手酌で2杯目を注ぎ盛大に空けている。
疲労を酒で誤魔化しているのだろうか。
それでも、最初の時に滲ませていた不機嫌さが薄れているようで、恭弥は内心で吐息を付いた。
あぁ言った態度をディーノが取るのは本当に珍しいのだ。
仕事先で何か嫌な事でもあったのかも知れない。

和らいで見える雰囲気に微かに口元を緩ませて、進められるままグラスに口を近づける。
鼻腔を擽る香りは確かに芳しく、己の好むものだった。
しかし僅かに液体を舐めるだけですぐにグラスを机に置いてしまう。

「やっぱり口に合わないか?」
「いいや?良い香りだし、口当たりも悪くないみたいだけど。…今はそんなに飲みたくない気分なんだ」

静かに答えるのに「そうか」と残念そうにディーノは呟いた。
向かいに座っていた恭弥は立ち上がり、また物憂げな息を吐くディーノの前に立つ。
近づく自分に何故か緊張した気配を察した。
気のせいかと思うほど僅かだったが、恭弥は目を細めディーノの髪をそっと撫でた。
すると、ぴく…と身体が震えるのを感じる。

それに気付かないふりをして横に座ると、恭弥は唇を寄せた。
横から近づく顔を避けようとはせず、グラスを机に置くと自然とキスを受ける。
差し込んだ舌から芳醇なワインの香りがふわりと漂い、それを味わうように深く絡めていった。

「ん…、ふ…ぅ」

互いの息が熱くなり始めて口端から甘い吐息が漏れる。
常の流れで恭弥はディーノのシャツをたくし上げかけると、やんわりとその手を押さえられた。
訝しげに見る恭弥の視線を受け止め、ディーノは緩く頭を降る。

「…悪い…。今日は疲れてるから…」

確かに答える声に覇気はない。
じぃ…と探るように見つめていると居た堪れなくなったのか、ディーノは視線を落とした。


〜 中略 〜


監禁でもされるんじゃないかと懸念していたが、思いのほかあっさりと開放されディーノは拍子抜けする。
あれだけ逆上した恭弥を見るのも初めてだった。
唐突にやってきた相手に処理も間に合わなくて、バレた時は殺されるんじゃないかと思ったが。

バスルームで酷く抱かれたのが嘘のように、ディーノの身体を清め優しくベッドに寝かせてくれたのだ。
そして朝を待つ事なく、ホテルを出て行った。

(思うままsexをして発散したのかな…)

ありえそうな事にディーノは苦笑する。しかも、引き金になった出来事には一切触れなかった。
もう止めろとか言われるのも覚悟したが、存外に恭弥は物分りが良いらしい。

自分だって全く抵抗がないわけじゃない。
恭弥を愛してるのだ、恭弥以外に触れるのも触れられるのも、楽しい事じゃなかった。
でも自分は、その辺りをきっちり割り切れる性質だから。円滑な取引の為には仕方ないと思っていた。
だから、それを遮られなくて良かったのだが…。

(止めろって言われなかったのも少し寂しいな…なんて)

自分本位な思いが浮かぶのに苦笑を禁じえない。
昨夜は苦しくて辛い抱かれ方をしたが、心の底で喜んでいる自分も居た。
嫉妬から来る激しい行為に。自分が想われている事を感じられて、熱の高まり方が半端じゃなかったのだ。

そんな思考にゆるゆると頭を振ると、壊れてるなァ…と他人の事のように呟いて、ディーノは身支度をした。
もう二度とヘマをしてはいけない。今回は恭弥の気も治まったようだが、次はわからないのだ。
嫌気が差して捨てられるかも知れない。それだけは、絶対に避けなければ。

オレは、恭弥が居ないと駄目なんだから。