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◆またもシリアスで、5年後くらい。
今までも良くあった想い合ってるはずなのにすれ違ってるパターンです。
もうホント、ワンパターンで申し訳ないです。
今回視点がころころ変わります。恭弥とディーノ双方の考えを書きたかったので。
んでもって恭弥がだいぶ、女々しいです。つーか、ちょっとおかしいです…(笑)
2人の精神が主になってて、あんまりアクションはありません。
すぐにわかるのでネタばれ的な事書きますが、今回の転機はディーノさんの記憶喪失です。抗争で(笑)
あと、自分的にはちょっぴりですが、雲雀→ディーノで暴力的&強姦表現があります。
この辺り、嫌いな方はご注意を。
とはいえ、エロメインではないので、あんまりキツくはないです。
時間とページ数の都合ではしょっております。エロだけ書きたい…(笑)
シリアス書くとこの欲求が残るんですよね(笑)
<冒頭抜粋>
静寂が部屋を包む。
ディーノはおざなりにシャワーを浴びた後のバスローブ姿で、ソファに座りじっと空を見つめていた。
片膝を抱えテーブルの上のワイングラスに目を向けているが見ているわけではなく。
その視線は赤い液体を通り過ぎて、数時間前の出来事に合わされていた。
ふいに、ずるり…と身体が横に倒れて、ソファに気だるい身体を横たえる。
口元から出るのは溜息しかなかった。己へのものと、去って行った彼へ向けて。
今日は数週間ぶりに会う約束を交わした日だった。忙しい時間を調整し、何とか長く会えるようにした日だったのだ。
しかし、楽しみにしていたのは自分だけだったらしい。
「別の用事が入ったから長くは居られない」
待ち合わせたホテルに着くやいなや、落した言葉はそれだった。
さすがに落胆を隠しきれず「合わせるのに苦労したのに」と漏らすと、彼は…恭弥は少し不機嫌そうに瞳を細めた。
「だからちゃんと来ただろ?やる事はやっていくよ」
声色が低いのに、気分を害した事を悟る。
やばい…と思った時にはすでに遅く、視界が回転してベッドに押し倒されていた。
“やる事 ”の意味を悟って思わず顔を顰める。
別に望んでいないわけじゃないが、それだけが目的でもないのに。
まるで「これがしたかったんだろ」とでも言われてるようで腹が立った。
しかし押し退けようとしても、自分が思いきり出来ない事を心得ている恭弥には難なく抑え込まれてしまう。
そしてキスをされたら…もう、流されるままだ。
行為に慣れた身体はそんな状況だったとしても、触れあってしまえば勝手に欲してしまう。
ろくに慣らさないままに恭弥が中に入って来ても、声では悲鳴を上げながら内部が傷つく事はなかった。
無意識に柔らかく侵入を導くそこに、ふいに恭弥は口端を上げる。
嘲笑、されているみたいで。涙が出そうになった。
お互いに忙しいのはわかっている。最近はすれ違うように会ってsexだけして離れるばかりだ。
時間がないのも承知の上だから、その辺は割り切っていたつもりだった。
しかし、今日はちゃんと会えると思っていただけに気持ちが付いて行かない。
扉に向かう恭弥の腕を掴んで、引き止めてしまいたかった。
逃れられないよう思いきり抱き込んで「行くな」と言いたかった。
でも、どこかにある躊躇が、それを許さなかった。
「じゃあね」
と言って扉に向かう恭弥に「あぁ」と一言を返すのが精一杯だ。
これ以上の言葉を紡げば、取り乱して縋ってしまいそうだったから。
感情を押し殺した短い返事を聞いて、恭弥は一瞬だけ立ち止まって。肩越しにこちらを見たような気がした。
しかし表情までは見えず、すぐに視線を戻すと部屋を出て行った。
(…お前にとって、オレはどういう存在だ?恭弥…)
今はもう居ない相手に、ディーノは心中で問いかけた。
聞こうにも聞けずにいる問いだ。はっきり言われてしまったら、元に戻れなくなる気がするから。
もっとオレを見て欲しい。身体だけじゃないんだ、心ごと全てお前が欲しくて堪らないのに。
でも、何よりも自由を好むお前だから。束縛したら離れていってしまいそうで…。
怖くて言えないんだ。
高級ホテルの柔らかい絨毯を踏みしめながら、恭弥は一人出口に向かっていた。
もともと疲労もあって苛々していたが、会う前よりもそれが酷くなっているのがわかる。
ロビーを通り過ぎて外に出ると、黒塗りの車が横付けされていて。慣れた仕草で後部座席に乗り込む。
「戻って」
短く一言で指示すると、運転席の部下は「はい」と簡潔に答えて車は発進した。
質の良いシートに背を預け、ようやく身体の力を抜く。
ずき…と手の平に痛みが走るのを感じた。視線を下げると、爪の痕が食い込んでいるのが見えて眉を潜めた。
どうしてこんな事を繰り返しているのだろうか。恭弥は心中で自問する。
身体を重ねる為に会っているだけだ。何も意味はない。
性欲処理ならば彼にも、自分にも他に居るはずだ。それなのに自分は彼を呼び、そして彼は応じてくる。
恭弥は流れていく窓の景色を見ながら長く溜息をつく。
初めは何も考えていなかった。
欲しいばかりで動いていた少年の頃。ただただ、彼を求めてがむしゃらに向かって行っていた。
そんな自分を受け止めた彼と、今まで長い間一緒に居た。
自分が広い世界に来てから数年、多忙でゆっくり会えなくなって。
sexだけしては離れる逢瀬に疑問を感じるようになったのはいつ頃だろう。
好意がある事はわかっている。でなければ約束を交わしてまで会おうとは思わない。
しかしそれも、惰性で続いてるだけだとしたら。
彼は断れないだけで、流されているだけだったとしたら。
さっきだって性急に進めるのに嫌そうではあったけど。初めてしまえば受け止めてしまう。
それに、引きとめようとすらしない。
急に予定を変更して理不尽な事をしたのは明らかなのに、責めずに…僕が出て行くのを見送るだけだ。
(…僕はどういう存在なんだろう)
そこに明確な気持ちはあるのだろうか。
ただ、拒めないから付き合っているだけなのではないか。
はっきり抵抗出来ないのは、あなたが優しいからかい?
それとも…、身体の相性が良いから、その所為かと邪推もしたくなる。
己だけで答えが出ない事がぐるぐる巡りそうになり、恭弥は緩く頭を振った。
どのみち、答えを聞きたくなくて聞けないのだ。終わりを恐れているのは自分の方。
それなのに、上手く立ち回れない事が歯痒い。
傷つけたいわけじゃないのだ、僕はただ―――…
(求めて欲しい、だけなんだ)
<本文一部抜粋>
低く脅すような声色はそのままに恭弥は言葉を続け、片膝を畳に付けるとディーノの顎を強く掴んで視線を合わせる。
痛みすら覚える顎の手よりも、怒っている事がわかる目の色の方に身体が竦むようだった。
こんな視線を向けられた事があっただろうか…、いや、知るわけがない。自分は覚えてないのだから。
けれど身体の中で何かが訴えていた。全身に震えが走るのを感じる。わけのわからない恐怖感に思考が混乱していた。
…この人に、触れられたくない…!
「…っ、離せ…!!」
そう認識した瞬間、ディーノは思い切り恭弥の身体を突き飛ばしていた。
唐突に胸を強く押されてバランスを保てず恭弥は畳に尻を突く。まるで全身で拒絶されたような行動に目を見開いた。
目の前に居る相手は両腕を抱えて自らを抱き締め、此方を凝視している。
心なしか震えているようだった。瞳の奥に怯えの色が見てとれた時。恭弥の頭の中で何かが切れた。
(あなたが…、僕に怯えるなんて…)
記憶がない事は理解している。だから、これは本能的に感じ取っている事だ。
だからこそ許せなかった。無意識化において自分を拒絶するなんて、あってはならない事だ。
「それなら…どうして、今まで関係を続けて来たんだ」
前後の意味の繋がらない言葉をぽつりと呟いて、恭弥はディーノに近づいた。
咄嗟に逃げようと後ずさる行動に余計に煽られ思考が麻痺していくのを感じた。
もう…要らない。こんなもの。
彼の言う通り…きっぱりけじめをつけてやる。
二度と会いたくなくなるくらいに。
…壊してやる…。
「…っやだ、離せ…、止めろ…!」
「黙れ」
表情の消えた恭弥に更に恐怖を感じて、ディーノは手足をばたつかせて暴れる。
本気の抵抗に押さえつけるのに苦労はするが、冷静に対処出来ていない為、隙も多い。
太股に跨り体重をかけて腹部を強く殴ると、苦しげに眉を寄せて動きが止まり、咳き込んだ。
その隙に恭弥は両手を後ろに捩じ上げてネクタイで縛る。
「げほ…、ぅ…ぐ…」
「暴れたら何度でも殴ってあげる。あぁ…でも、大人しくしてても優しくする気はないけれど」
苦しさに涙が滲む顔を見下ろし、抵抗の弱まった足を掴むと一気に下着ごとズボンを降ろした。
その行動にディーノは更に顔を歪ませて腰だけでずりずりと離れようとする。
悪足掻きをする様子が滑稽で恭弥は、く…と口端を上げた。
嘲笑するような表情。それを見た瞬間、何かが脳裏を過ぎって行った。
胸が痛くなるようなあの顔。嘲笑しているようで…どこか、切なげな色が浮かんでいる…瞳を。
何処かで見た事がある…。
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