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◆通常の当サイトの設定とは異なります。
ディーノさんがビジネスや遊びで誰とでも寝るようなお方になっており、第三者との性描写もあります。
第三者はぼかしてありますが、雲雀以外となんて…!と思われる方は読んじゃいけません…、たぶん。
最終的には…、まぁ、そこは私ですので(笑)ご想像通りかと思います。

終始ディーノ視点。全部だから珍しい…かな?難しかったです(笑)
全体的にずーっと裏系の話です。身体の関係についてだらだら書いてる感じの、事件やアクションは少ない品です。



<冒頭部抜粋>


高級ホテルのスイートルームの浴室で、ゆっくりと湯に浸かりながら、ディーノは長く息を吐いた。
もともと湯に入る習慣は無かったが、数年前に日本に入り浸っていた頃に心地良さにすっかりはまって、今ではイタリアの屋敷にも浴槽を備え付けさせたほどだ。

暖かい湯を手ですくって、顔にぱしゃり…とかける。それから斜めになっている浴槽に背を預けて、暖かさを堪能する。
スイートなだけあってイタリアには珍しく広いバスタブで良かった。使わない手は無いだろう。

しかし、今ベッドで寛いでいる相手は、自分が湯船に浸かっているなど思いもしないだろう。
同じイタリア人だから習慣もないし、特に日本贔屓だと聞いた事もない。
寝てて良いよと言っておいたから、もう就寝しているかも知れない。する事はしたし別にそれでも構わなかった。所詮はただの身体の関係だ。

ディーノは濡れた髪をかき上げながら、そろそろ逆上せそうな熱さに再度息を吐いた。
今日の相手はある企業の社長だ。何度か商談をしているうちに相手が色目を使って来たから応じてやったら、大口の取引を落として行ってくれた。
それをきっかけに未だに関係が続いているが、別に相性も悪くないし快くこちらに利があるビジネスをしてくれるのだから、安いものだ。
ディーノにとっては取るに足らない事だった。この世界、愛人なんて山のように居てもおかしくないし、利益の為なら己の身体を使う事すら厭わない。

別に強要されたわけじゃないが、ボスになってからファミリーの建て直しをする為に、ディーノはあらゆる手段を使っていた。
過保護とすら言える、部下達に知れたら止められるだろうが…。

(別に、オレが嫌でやってるわけじゃねぇから、良いよな)

さすがに体温上昇が著しく頭がぼう…としてきた為、ディーノは惜しみながらも湯船から立ち上がる。
置いてあったふかふかのバスタオルで身体を拭き、バスローブを着ながら浴室を出た。すでに暗くなっている部屋に、予想通り相手が寝ている事を悟った。

恋人でもない、愛人でもない。ただ快楽を共にするだけの相手だ。向こうもピロートークや甘い雰囲気など欲していないだろう。だから、寝ていてくれる方がありがたい。
…まぁ、それを見越して。殊更に長くバスルームに居たのだけれど。

(Sexが終われば、お互いに用もないし)

行為後にさっさと帰るほど淡白な性質じゃないから、相手が帰らない限りは一緒に居るけど。
恐らく明日の朝は、オレが寝ている間に居なくなるだろうな…。

そんな事を考えながら、ディーノは髪を乾かすのも適当に別になっている隣のベッドに入る。
こんな相手は、ディーノには他にも沢山居た。割り切った関係を楽しんですら居たのだ。時には表面上甘い言葉を吐く事もあったが、それすら手段でしかない。
こんなもの、世界で最も軽い行為だ。



〜 中略 〜



「オレだよ、恭弥。ディーノだ、久しぶりで忘れたかも知れないけどな」
「―――――」

第二関門の方が難しいだろうと内心思いつつディーノは声をかける。すると案の定、相手からは答えはなく返ってきたのは沈黙だけだった。
数秒の間が開いて諦めかけた時、意外にもドアが中から開けられた。
隙間から徐々に見えるかつての教え子は、未だ少年の面影はあるものの幼い印象は消えすっかり大人の顔つきになっていた。
最後に会ったのが綱吉がボスになった時だから、かれこれ1年くらい見てない事になる。
このくらいの年の頃の成長は目覚しいな…と、一番印象に強い良く会っていた頃の少年と目の前に居る青年とを見比べて目を細めた。

「…どうせ、沢田綱吉の差し金だろ?追い返すと煩いから適当に入ればいい」

淡々とそう告げて恭弥はドアを細く開けたまま中へと戻って行く。
相変わらずの愛想のなさに苦笑を禁じえないが、ひとまず関門は突破できたのでよしとしてディーノは入室した。
一瞥のみで済まされていた学生時代に比べれば、声をかけるだけマシだろう。

特に相手をする気も無いのか、恭弥は先ほどまで座っていたソファに再度腰を降ろし、机に並んでいたリングを眺めだした。どうやら贈り物の一部を物色しているらしい。
先に綱吉に聞いていた話しに光景がぴったり合致して、ディーノはくすくすと笑いを漏らす。

「……何?」

部屋の片隅に積まれている箱やワイン等の贈り物を眺めながら、あからさまに笑っているディーノに恭弥はじろりと視線を向けた。
一際目を引く上質な1本のワインを手に取ってから戸棚に向かいグラスを2つ持つと、ソファに歩いてその視線を受け止める。

「別に?久しぶりだけど、変わってないなって思ってな」
「――…あなたもね」

揶揄るように言うと意外な言葉が返って来て、ディーノは目を瞬かせた。
(軽口に反応するような奴じゃなかったのに)
並盛という狭い檻から抜け出し外の世界を知って、多少はコミュニケーションを取る事を覚えたらしい。
教え子の成長に嬉しそうに顔を綻ばせて、対面したもう一つのソファに座りグラスを相手に差し出した。

「ツナに適当に飲んで良いって言われたんだが、恭弥もどうだ?」
「…僕は洋酒は嫌いだ」

少しは柔和になったかな…と思ったら。すげなく断られてディーノは内心で苦笑する。
しかしその程度でめげていたら恭弥と話す事は出来ないだろう。さして気にした風もなく一人でワインのコルクを馴れた手つきで抜くと、グラスに注いで飲み始める。

ボンゴレに贈られるだけあって上等な飲み口に自然と顔が綻び、くい…とグラスを大きく傾けて喉を鳴らした。
流し込むように飲む様子に呆れたような視線を向けるものの、ディーノの酒の強さは知っているのか恭弥は何も言わない。
再度手元に顔を向けると、宝石を鑑定するようなルーペでリングを検分していた。

「日本酒だったら飲むのか?」

2杯目を注ぎながら何となく会話のネタを振ってみる。すると恭弥は顔は向けないものの「そうだね、嫌いじゃないよ」と返答した。
会話が繋がるのに気が良くなり、美味くなった酒を今度はゆっくりと口に含む。

「じゃあ今度、旨い日本酒を用意するからさ、一緒に飲もうぜ」
「……、その約束は出来ないな。酒だけくれるなら歓迎するけど」
「ったくもー…、変わったのか変わってないのか。…まぁ、本質はきっと同じなんだろうな」

返事はするもののあくまで可愛くない答えに、中身はやっぱり変わってない、可愛くないじゃじゃ馬だと認識する。
自分が知ってる恭弥のままだなと思うと懐かしさに胸がいっぱいになった。

思えば数年前のあの頃は…、一番楽しく過ごしていたような気がする。
別に今に不満があるわけじゃないが、マフィアの生活を一時でも離れていた日本での生活は、ディーノにとっては深い記憶になっていた。
綱吉がこちらの世界に入り、恭弥もまた立場は違えど裏の世界の住人になってしまった今では、もう戻れない平和で普通に過ごしていた日々。

多少感傷も混じり、緩く頭を降ると残っていたワインを飲み干す。
濃厚な液体が喉を通り心地良い酩酊感が身体を包んだ。酒に馴染みすぎて酔っ払う事は出来ないが、緩く広がる感覚は好きだ。

「…んー…、この酒、美味いな…」
「潰れたら外に放り出すよ」
「ワインごときでオレが酔うわけ…、…んん?」

冷たく言い放つ恭弥に軽く笑って応戦していると、途中で言葉が途切れて目を瞬かせる。
不可思議な声を出して固まるディーノに、さすがに顔を上げて恭弥は訝しげな視線を向けた。

「んー?…ん。…あ…これ、ヤバイな…、仕込まれてるな」
「…は?何言ってるの?意味不明だよ」
「―――…あぁ…。この酒、薬が入ってる。まぁ…いわゆる、催淫剤」

大した事でもないかのように言う言葉に、恭弥は僅かに驚いた面持ちで瞼を上げてディーノを見た。
おおよそ酔うような量でもなければ強い酒でもないのに。徐々に抜けていく力と熱くなっていく身体から、長年の勘でディーノは決定づけた。

ここにあるものは検査をする前のものだから、無造作に置かれていてもおかしくはない。
まさかボンゴレに向けて贈られたものに…とも思ったが、この世界どこに罠があるかわからないものだ。
もしかすると会場で飲ませるつもりだったか、後で綱吉を呼び込むつもりだったのか…。どちらにせよ綱吉に回らなくて良かったと思う。
飲む時点で気づかなかったのに不甲斐なさを感じるが、味からはわからないようにかなり巧妙に隠されている。
薬や酒に慣れていない人物なら気づかず酔っただけと思う可能性が高い。
未だこの世界に入って日の浅い弟弟子では薬の耐性もないから、罠に引っかかって手篭めにされていたかも知れない。

(…ま、どのみち。検査もなしでツナが口にする事はないだろうけどな)

じわじわと熱くなる身体を感じつつも、ディーノはわりと冷静に分析していた。
裏の世界に長く居る身だ、こうした薬の耐性はそれなりにはある。
力が抜けて立てなくなっているのはわかるが我を忘れるほどではなかった。ただ、1回くらい抜かないと治まらないだろうな…とは思っているが。

「…そーゆうわけだからさ、恭弥…。ちょっと席を外してくれねぇか?」
「―――何で?」

くたり…とソファに横に寝そべり、腕置きに頭を乗せながら濁して言っても恭弥は気を利かせるどころか不思議そうに聞いてくる。
わかんねーかなー…と頭を掻いてちらりと視線を流した。

「催淫剤って言っただろ。自分で抜かねぇと勃っちまってて動けねーの。お前の目の前でやるわけにも行かねぇだろ」

あえて言葉の裏を探らない相手にはっきりわかるように告げてようやく、「あぁ」と恭弥は頷いた。
それで出て行ってくれるかと思いきや、平然とそのまま元の作業に戻ったのだ。すなわち、リングの検分に。

「……オレの話を聞いてるか?」
「聞いてたよ。別に、僕は構わないから勝手にしたら良い」



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