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◆全体的にシリアスです。またも5年後くらいの話です。
ディーノがある理由で意識不明になり、その代りにそっくりなアンドロイドがボスを務めます。
専門的な事はかなり適当に誤魔化してますのでご容赦頂きたい…(笑)
ちょっと切ない感じの話でいちゃいちゃ度は低めです。恭弥が頑張ってます。
ほとんどパロディと言っていいですので、お気を付け下さい。恭弥視点で、半分くらいはもう一人と過ごします。
読むのが怖いので詳細を教えてくださいと言う方にはEDまでのあらすじを伝えます(笑)メールフォームから聞いてください。
直接買われる方は直に聞いて下さい(笑)ただし、完全にネタばれになりますが(笑)
<冒頭部抜粋>
これで3ヶ月、連絡が途絶えた。
連絡が繋がらない事自体は珍しくはない。
忙しい日々を過ごしているのはお互いで、遠方の仕事に出ている時はもっと期間が空いた時もある。
但しそれは、僕が連絡を返さなかった場合の事。
(あの人からの着信もメールもないなんて初めてだ)
黒いスーツに身を包んだ青年は待たせていた車に乗り込んで、携帯を開き履歴に探す名前がないのに溜息をつく。
漆黒の瞳と髪、目つきの鋭さは学生の時から変わっておらず、年月が増した分深みを帯びていた。
運命的なリング戦から早5年。
孤高の浮雲と呼ばれた雲雀恭弥は、今ではある組織のトップとなり己の目的の為に日々を忙しく動いている。
その組織も彼が作り出したわけではなかった。
彼に心酔する周りの者がいつの間にか設立していたものだ。
群を嫌う恭弥は組織に組しているとは思っておらず、自分の役に立つから好きにさせている、そんなスタンスだ。
だからと言って内部に全く携わっていないわけではない。
運営の為の費用や最低限の指示は与えていて、その力無く組織を維持する事はできなかっただろう。
もとから特定の部類の人物を引き付ける性質ではあるが、能力のないものに人はついて来ないのだ。
「恭さん、どこへ向かわれますか?」
口は出しても組織の人間とは滅多に顔を合わせない彼が唯一、直接言葉を伝える部下の草壁が、暫く黙っている後ろに声をかけた。
恭弥をこの呼び名で呼ぶのも、長年の付き合いである草壁のみだ。咎められないのは信頼の証であろう。
自分のペースを崩されるのを嫌う恭弥だったが、草壁の言葉で思考を遮られても怒りは浮かばなかった。
あくまで控え目に、恭弥の意思を伺う為の質問だ。
もしここで答えなかったら、彼は恐らく何時間でもハンドルを握ったまま待つだろう。
「……キャバッローネ邸へ」
「了解しました」
数ヶ月ぶりに告げた行き先にも特に詮索はしない。
彼が口を出す事があるとすれば、恭弥に害が起こるであろう事を言い出した時のみだ。
それも進言に留まり、結局は恭弥の意思を遮りはしないのだが。
滑るように走り出した車の振動に、恭弥は長く息を吐いて柔らかいシートに身を沈める。
僅かに顔を向けて、スモークガラスから移って行く景色に視線を向け思考を戻した。
彼…、ディーノからの連絡が全くない期間は、恭弥が思い出せる限りひと月続いた事はない。
たとえ自分が着信を取らなくても、返信をしなくても。
忙しい合間を縫って、ディーノは他愛もない事をメールしたり留守電に残したりする。
彼らしいとは思う。
会った時は飛びつかんばかりの勢いで自分に愛情を向けてくるディーノは、離れて居ても自分の気持ちを伝えたいのだろう。
出会った当初は鬱陶しいばかりだったが、本気で心を預けてからは満更でもなくなった。
恭弥はいちいちそれに返しもしないが。読んで、聞いて…彼の無事を確認していた。
それをディーノも知っている。だからこそ出来る限りメッセージを残していくのだ。
ディーノもまた、開封通知だけは返してくれる恭弥の無事を知るために。
それなのに。
(僕からのメールの返事もないなんて)
恭弥はひと月ほど前から、定期的にメールを送信していた。
もちろん凝った文章ではなく、一言「何してるの?」それだけの同じ文を週に1度程送っている。
メール不通の案内はないから、届いてはいるのだ。しかし返事は来なかった。
その他、草壁に直接連絡を取らせたりボンゴレに当たったりもしたが、
いずれもキャバッローネは現在取り込み中で、ボスとの連絡は無理との報告だった。
さすがに痺れを切らした恭弥は、継続中だった仕事を一旦置いてイタリアに戻って来ていた。
キリが着かずどうしてもすぐには来れなかったが、外部から連絡がつかないなら乗り込めばいいのだ。
恐らくは、ディーノの身に何か起こったとしか思えない。
そうでなくては自分に対してこれだけの期間、我慢できる人じゃないのだ。
今までの行動や性格を考えてもおかし過ぎる。彼自身ではどうにもできない事が起こっている。
しかもそれは…、彼の部下すらも巻き込んで。
恭弥は急く気持ちを抑えて、ぎゅ…っと携帯を握った後、開いて操作し受信メールのフォルダを開いた。
きっかり3ヶ月前のメールを開く。
暗い車内の中、青白い光で顔を照らしながら他愛無い日常を綴った文を読んで、最後の1文に目を止めた。
メールの最後に、必ず彼が付ける言葉。
『Ti amo,Kyoya.』
何故だかその言葉が、今は酷く遠く感じる。
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