戻る

◆吸血鬼の話をベースにした、完全パラレルなのでご注意ください!

登場するのは、ディーノ、雲雀、リボーン、ロマーリオ、他吸血鬼(笑)
現代の世界に吸血鬼がいて、それを捕まえるハンターがいるという設定です。

2人が出会うところから、新米ハンターの恭弥をディーノが家庭教師したり(笑)
慣れるにつれ、何かが芽生えたり(笑)この辺、通常設定と変わらない感じだったり。
要所でリボーンがやたらと出てきたり(笑)そんな感じです。
サイトより展開が早い。恭弥が押してます、ちょっと素直(笑)そしてエロが楽しかったです(爆)


<冒頭一部抜粋>



「お前、暫く日本に滞在してくれねーか?」
「……なんでだ?」
「最近、この近辺であいつらが増えててな」

"あいつら "という言い回しに、ディーノがぴく、と反応して横に視線を向けた。

「このままだと被害が増えると予想してる」
「オレにハンターの助っ人して欲しいって?」
「話が早くて助かるぞ」

にやり、と笑う赤ん坊を、ディーノはやれやれ、と肩を竦めた。

「こないだまで忙しかったんだぜー?ツナに会いがてら休憩しに来たってのに」
「忙しい時期は重なるもんだ、…と言ってる間にお出ましだな」
「え?あ…ホントだ」

急に言葉を止めて、公園周りの樹木を見るリボーンに習うと、確かに先ほどまでなかった気配があるのに気付いた。

「オレは呪いで戦えねーからな。頑張れ、ディーノ」
「結局…その呪いが何か教えてくんねーよな。めんどいだけだったら怒るぜー?」

気が進まないようにディーノは立ち上がりつつ、自分の獲物を腰から取り出す。
しなやかな鞭が、その手に握られていた。
ディーノは表情を引き締め、ゆっくりと気配の方へ身体を向けると。
人工で植えられた茂みの中に、確かにあいつらの気配がしていた。

"あいつら"―――すなわち、吸血鬼 が。


* * *


『吸血鬼』と呼ばれる彼らは、伝説上のものだった。
人間の生き血を啜り、永遠に生き長らえると言われる。

そんな想像の魔物が現れたのはもう数十年も前になる。
初めは奇妙な事件だった。山中で大量の失血で倒れていた女性が発見されたのだ。
命は取り留めていたが外傷は無く、見つかったのは首筋に二つの傷跡。
面白がったメディアは、それを吸血鬼事件と名づけ、騒ぎ立てた。

しかし、その事件を皮切りに、吸血鬼事件は相次ぐ。
はやし立てていた報道も次第に息を潜め、ニュースは被害状況のみが流れた。
警察は全くその正体を掴めず、事件は解決するどころか増加する一方。
命を落としたものは居なかったが、犠牲者は血に飢え、日の下に出られなくなり。
そして夜な夜な血を求めて徘徊するようになる。自らも吸血鬼になり果てる事に、人々は脅威に怯えていた。

しかしその裏で。暗躍する者たちがいた。
吸血鬼事件発祥から暫く。もとから特別な力を持つ者が、それを極めた結果。
数十倍の身体能力を持つ吸血鬼に対抗できる者が生まれた。
その者たちは単純にハンターという名で呼ばれていた。
昨今では、ハンターを認定する機関まであり、警察と同じような動きをしている。
財源は不明だが、ハンターには機関から莫大な報酬があるため、なろうとする者は居るのだが。
特別な力が芽生えない限りなれない彼らは、まだ稀有な存在である。


* * *


樹木の影から現れた姿を見て、ディーノは顔を顰める。
赤く光る瞳だけを凶悪に輝かせた、その吸血鬼は女性だったからだ。
もともと人間だった事を思えば、あまり戦いたくない相手だ。
しかし油断をしているとこっちが致命傷を負う。

「……っと!」

長い爪を光らせて突進してくる彼女を、ディーノはひょい、と避けて飛びずさる。
簡単に見えるが、移動の速度は半端ではない。しかしディーノは、その動きを完全に見切っていた。
彼もまたハンターとして訓練され、特別な力を持っている。常人では避けれなくとも、熟練のハンターである彼には朝飯前の事だ。

軽やかに相手から距離を取ると、鞭をしならせて彼女の腕に巻きつけた。
ぐ…っと、引っ張る強い抵抗にも動じずに繋がった鞭を固く握ると、気合を入れる。

すると、唐突に白く光る炎のようなものが、ぼぼぼぼ!…と、鞭に現れ、手首から相手に伝って行くではないか。

それは彼女が鞭を離すより早く身体を包みこみ。直後につんざく、悲鳴が炎の中から聞こえて、痛ましさにディーノは顔を歪める。
その時ふいに背後から、突き刺さるような泣き声が聞こえてきた。

「うわぁぁぁぁん!!!ママーー!!!!」

その意味を捉え。びくん…っと、ディーノは気を向けた。
(え。マジ…、この子の母親!?!??)
そんな動揺が走って集中が途切れ、白い炎は、ふ…っとかき消えてしまった。

ちっ、とリボーンの舌打ちが聞こえた気がして。
次の瞬間、苦しんでいた吸血鬼が一瞬で間合いをつめ、ディーノに襲いかかっていた。
(や…っ、べ…!!)
と思った時にはもう遅い。傷を与えるべく繰り出す攻撃は、身体を抉ろうと迫っていた。

刹那。

びゅん…っ!と、何かが横から飛んできて。彼女の身体もろとも吹き飛ばした。
驚く間もなく「ディーノ」と鋭いリボーンの声が聞こえ。
はっとして反射的に未だ繋がっていた鞭に気合を入れた。再び、相手は炎に包まれる。
背後で泣く子供の声を聞かないふりをして、今度は相手が意識を手離すまで、気を逸らす事はなかった。


炎に包まれたと言うのに、彼女に外傷はなかった。
これが彼らの特別な能力だ。炎に見えるオーラに似たものを自在に出せる事が、ハンターの必須条件だった。
どういう理由があるかは解明されていないが。常人以上の力を持つ、吸血鬼の意識を奪う事ができる。
気を失った女性は、電話で呼んだハンター機関の者が連れて行った。吸血鬼が収容される施設があるのだ。
これらに警察が介入する事はない。常人の理解を超える状況なので独自の機関として黙認されている。

「甘ぇぞ、ディーノ」
泣きじゃくる子供を連れて行く機関の者を見送った後。
のほほんとリボーンに言われてディーノは顔を顰める。

「だってよぉ…」
「想定できない状況じゃないぞ。動揺してどーすんだ」
「もともと女性を相手にすんの苦手なんだよなー…、でもこれで1人減っただろ」

嫌な仕事を終えた、とばかりに。はー…、と長く息を吐いて、ディーノは武器を腰に戻した。

「そーいや途中。助けてくれたよな」
「オレじゃねーぞ」
「へ?」

思いかけない返答に、じゃぁ誰が?と、ディーノが目を瞬かせた時。
がさりと茂みが揺らぐ音がした。
ぎょ…っと、してディーノは振り向く。
今は茂みから数メートルも離れていない、それなのに気配を感じなかったなんて。

「それ…、返してくれる?」
「何だ、ヒバリか。ちゃおっス」

女性の倒れていた位置に落ちていた、トンファーのような武器を指して、現れた少年は言った。
ディーノはその武器が、変幻自在のトカゲのレオンというリボーンのペットだと思っていたのだが。
すたすたと歩いて武器を拾い上げ、少年が一振りすると。トンファーはどこかへ収納された。

「やぁ…赤ん坊。今の一件は一つ貸しでいいかい?」
「仕方ねーな。賞金の半分…いや、8割はやるぞ」
「ワォ、太っ腹だね。そこの甘ちゃんのおかげで楽に稼げたよ」

知り合いらしい二人の淡々と進む会話に、ディーノは取り残されて、ぽかん…と見ている。
そうして「じゃあね」さっさと帰ろうとする少年に、ディーノは「あ、おい!」と、思わず声をかけていた。

「……何?」

そう言って振り返る視線が合い、ぐ…と、その場に固まる。
(こいつ…、何てぇ目をしやがる)
数々の修羅場を潜って来たディーノが、思わず息を飲んでしまうほど。
少年の黒い瞳は鋭く、力に溢れていた。

「…助けてくれて、ありがとな」

しかしそれで気圧されるディーノではない。律儀にそう礼を言って笑いかけると。
少年はつまらなさそうに「赤ん坊に貸しを作りたかっただけだよ」と言って、去って行った。

「なぁ、リボーン」
「なんだ」
「……あいつ誰だ?」
「雲雀恭弥、あいつはこの街のハンターだ」
「…って、あんなガキがかよ…!?」
「お前がハンターになったの、何歳だ」
「そりゃ、…ガキだったけどよ。でも、オレとは状況が違うだろー?」
「特殊な例はどこにでもいるもんだ」

リボーンは帽子のつばを、くい…と下げて、ニヒルな笑みを浮かべる。
赤ん坊の姿だと言うのに違和感がないのが不思議だ。
そんなリボーンをちらりと見て、ディーノはそれ以上は何も言わずに肩を竦めた。