1:第一印象


最初に見た時?
そうだなぁ…、本当に一番初めは、拍子抜けしたかな。
リボーンが頼んでくるくらいだからさ。
さぞかし、がたいも良くて強そうな奴だと思ってたんだ。
それがどうだ。一見して華奢で小柄な子供で、顔立ちも可愛いし?
おいおい、これが本当に問題児かよ?って思ったさ。
次の瞬間に、覆されたけどな。



最初に見た時…?
そうだね…、しいて言えば、つまらなそうな不審人物?
緩くて軽薄そうな容姿だったし。連れ立って群れるような輩が、強いはずないし。
さっさと咬み殺してしまおうと思ったんだけど。
勝手に話し出した中に、唯一興味のある名前が出たんだ。
でもこんな弱そうな軟派な外人が、本当に?と思ったよ。
すぐに、覆される事になったけど。



「あなたを咬み殺せれば…」
そう言って、こっちを見たお前の目。たぶん一生忘れないだろうな。
ただの中学生の子供が、獰猛な獣を思わせるものに、豹変したんだから。
侮りそうになった自分を恥じたさ。まだまだ見る目がないって。
武器を構えたお前は、なるほど…、リボーンが気にするだけの事はあると思ったよ。
滲み出る殺気はただの子供じゃない。こいつは将来とんでもない奴になるって。
そしてきっと、それを長く見ている事になるだろうって。思った。



「その方が話が早い」
そう言って、あなたが獲物を構えた時。僕は内心驚いていたよ。
だってそれまでは草食動物にしか見えなかったのに。
一瞬にして自分と同じ匂いをするものに変わったんだ。
ぞくぞくした。やはり…あの赤ん坊の知人というだけはある。
僕はその時すでに予感していたよ。この人はきっと僕を楽しませてくれる。
それもきっと、長い間―――……



「それで?…今は最初から、何か印象が変わったか?」
「別に。あなたは相変わらず、緩いし、軽いし、群れてるし。強そうには見えない」
「ひでー言いようだなー、ったく」
「あなたは?」
「んー…?そうだな、どうだろうな。今でもお前は、可愛いなって思うし」
「…どれだけ殴っても、その軽い頭は治らないんだね。僕の第一印象も間違ってない」
「そんなオレに一度も勝てないくせに、強がっちゃって。やっぱかわいー子供だよ、お前は」
「―――今からそれを覆してあげるよ」
「望むところだぜ」



そう言って武器を構えた


お前は。

あなたは。


一瞬で戦うもの特有の、獰猛な瞳に変わっていた。
たぶん、第三者から見たら全く印象の違う二人だけれど。
案外、似たもの同士なのかも知れない。
そして。そんな二人は攻撃を交しながら同時に思っていた。
これから何年経っても、きっと似たような事をしているんだろうと。







勝負が終わった頃を見計らって、黒服の部下が下がる。
そんな事もすでに慣れた事で。二人きりになった彼らは武器を納め、互いを引き寄せ唇を重ねていた。
つい先ほどまで殺気を漲らせて闘っていたとは、まるで思えない睦まじさで。

「…本当に、変わらないよなぁ…」
「何?突然…」

戦いの興奮を貪るように深くキスをして。かすれた吐息を混じらせながらディーノは笑った。
雰囲気を壊すように揶揄る笑みに、恭弥は憮然として目を細める。

「いや。出合った頃の事を思い出しててな。あれから何年も経ったのに相変わらずだなって」
「昔を振り返るなんて、年寄りになった証じゃないの」
「…全く。お前のそういう、毒も変わらないな」

く…、と喉奥で笑い、頬にキスしたディーノは。再びその身体を抱き締める。
しかし腕の中の感触は思い出のものよりはしっかりしていて、確かな成長を感じさせた。

「まぁ、第一印象とは違うよな…。さすがにもう、可愛いとは言えないか」
「……ふ。あなたもね、落ち着いて見える」

そう言って微笑む恭弥に。ディーノの鼓動は早くなった。
(可愛い、より…綺麗になったな…ほんと)
昔より豊かな表情を見せるようになって、見惚れる回数が多くなった。
大人になって、柔らかくなったな…と、思う。それでも…


自分に呼応するように、彼の表情が甘く微笑んで。恭弥はどき…、として目を細める。
(落ち着いて…、色が増したよね…あなたは…)
しっとりした艶のある笑みに、どれだけ魅せられて来ただろう。
踏まえた年月は、確かにあなたの深みを増した。それでも…



気持ちはあの頃と変わらないな、と思っていた。
一瞬で惹きつけられたあの時の感情を。
きっとこの先もずっと、忘れる事はないだろう。



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2008.03.31



すみません、短く…て(笑)どうにも話を広げられなかったですよ。
変な書き方をしてみましたが、やっぱ変でした(笑)
短いので、同時に4もアップしました(笑)って後から読んだらわからない…。