初めてだった、こんな事は。
今までだって戦いの余韻が治まらない事はあった。
別に、その度に解消していたわけじゃない。
たまにそんな事もあったけれど、大抵は眠ってしまえば、朝が来る。
だけど、眠れない。鼓動が治まらない、苛々して、ぐるぐるする。
戦っている時はいい。攻撃をふるう度に、歓喜に包まれるのだから。
でも、あなたが手を止めた時から、逃げ場のない何かが、身体に蓄積されていく。
今日はもっと酷くて。朝から1日中戦っていたのに、ちっとも晴れない。
身体は疲れているのにベッドに入っても眠れない。
苛々する。何かに当たらないと気がすまない。
僕は、だるい身体を引きずり起こし、気がつくとあなたの部屋に向かっていた。
(寝ている間に、殴ってやろうか…)
そんな物騒な事を考えながら、部屋の扉を開け、近づく。
でも、無防備なあなたの顔を見たら、そうする気も失せた。
昨日の事を思い出したのかも知れない。
あの時、自分のを吐き出させて、あなたのも吐き出させて。
少しはすっきり、した気がしたから。
同じような事をして解消できると思ったのかも知れない。
だから眠るあなたに、キスをした。
本当を言うと、そこまで考えていたわけじゃない。
試しに「昨日みたいなのじゃ足りない」と言ってみたら。
あっさりとあなたは頷いた。理由は呆れるほど馬鹿らしいものだったけど。
「家庭教師」とか「生徒」とか、そんな言葉は全く興味なかった。
それで自分を差し出すなんて。呆れるほどお人好し。
あなたが原因だなんて言いがかりでしかないのに。
ついてきた自分のせいなのに。僕の事なんて、放っておけばいいのに。
断ったら、僕が修行から居なくなるとでも思ったのだろうか。
でも、そんな思惑なんて知らないよ。
差し出されたからには、僕は好きにさせてもらう。
後悔しても、もう…遅い。
男を組み伏せる趣味はなかったけど、不思議とあなたに触れるのに嫌悪はなかった。
たぶん、あなたの見せる表情が、僕が見たかったものと被るからだろう。
あなたの苦しみにも似た…表情が、声が。自分を煽る。
止められなくて、気づいたら…、夢中になっていた。
あなたの中は想像以上にきつくて、熱くて、気持ちが良くて。
制止の声なんて聞けるわけがない。
苦渋の表情から、苦しさが伝わってくるけど。そんなのも煽られる要素。
思うまま抉りたかった。でも、窮屈過ぎて動けないから、項垂れたあなたのモノに触れてやった。
そうしたらあなたの表情に、赤みが差して。
ぞくり…と、した。
鼓動が跳ねる。さっきまでの苦渋の顔よりも、煽られる気がした。
声に甘さが乗せられるのを聞いて、どうしようもなく身体が熱くなっていた。
何で、なんてもう、どうでもいい。
溺れるように、僕はあなたの身体に、沈んでいった…
*
“み〜どり〜たな〜び〜く〜、並盛の〜…”
夜まで続いていた戦いは、場に似つかわしくない音で唐突に止められた。
次の日。ディーノは約束通り、暗くなっても制止せずに戦って。戦って、戦って。
やっぱり決着がつかなくて、そろそろ止めた方が良いかもと思った矢先の事だった。
いっそほのぼのとも言える、間延びしたその音は恭弥から聞こえていた。
おもむろに携帯を取り出した相手を見て、ディーノは気が抜けて、がく、と肩を下ろす。
そのまま話し出したのを見て良い機会かもな、と思っていたら。声をかける事もなく、恭弥が踵を返した。
彼にとって、修行の続行よりも火急の用ができたらしい。
あれほど戦いに執着していたのに、終わりはあっさりしたもんだな…
と、苦笑しながら、ディーノはその背を見つめた。
ディーノの視線を感じながら、恭弥は並盛に向かう。
電話の内容は急用だ。並盛中に異変があったらしい報告は、見過ごせない事だから。
でも簡単にこの場を離れたのには、理由がある。
今朝起きた時に、今まで付きまとっていた苛立ちが消えていたからだ。
何故かは良くわからない。
擬似的とは言え、彼を組み伏せて、解消したからかも知れない。
ディーノとの勝負に執着がないわけじゃない。ただ、一旦の区切りをつける余裕はあった。
だからこの連日の戦いに決着が着いていなくても。
この場を離れるのに躊躇はなかった。
たとえこの場を去ったとしても。
これであなたが、終わったと思っていても。
僕はまだ、終わらせる気はないのだから。
End / back
一応ひと区切り(笑)修行終了まで。まだ日単位で話は書きますが、それぞれで読めるように書こうと思ってます。
まだまだ、何の感情が働いてるかわかってない二人です。もどかしいですね(笑)
書いてて日数的な事が曖昧だったので、コミックスを舐め回す用に見てメモしたら
この人たち、もの凄い日数が少ない…(がくり・笑)
出合って、リング戦が終わるまで12日しか経ってません(笑)ちなみに、今回8日目です。
時系列にしてチャート作ったので間違いない…はず(笑)修行の旅っつーから、3〜4日は行ってると思ったら。
ヴァリアー上陸の日に屋上で戦ってて、嵐戦で恭弥が帰って来てるんだから、
屋上からそのまま連れ出したとしても二泊三日じゃないっすか!ドラマも何もあったものじゃない…(笑)
本当はもう1日書こうとしてたところ、この事実から1日縮めた次第です(笑)
自分的メモでチャートを下に載せておこう…(笑)こんなぎりぎりの日程だったとは…(笑)
間違ってたら、突っ込んでください(笑)
1日目:応接室〜屋上。修行開始
2〜4日目:おそらくそのまま屋上にて。「真剣にやってくれないと…」
5日目:ヴァリアー上陸。夜にリング戦の告知。
6日目:登校するツナの話から続いて、屋上での血だらけ戦闘シーン。リング戦1回戦(晴)11:00開始。
(この夜からたぶん並森を離れている。でないと気付かれそうだし(笑))
7日目:2回戦(雷)たぶん、旅中。
8日目:3回戦(嵐)終了後、恭弥帰還。その後ディーノ登場。
9日目:4回戦(雨)ディーノと恭弥観戦。昨日、恭弥にリングの事を聞かれる。終了後スクを救出。ディーノ病院へ。
10日目:5回戦(霧)ディーノは旧友に会いに(スクの付き添い?)恭弥不明。
この後、雲戦決定。土手っぽい所(笑)の恭弥の所へディーノが訪れる「調子はどうだ?」
11日目:朝病院にてD「昼までにはなんとかする…」(設備のある病院の手配かな)
6回戦(雲)その頃、ディーノはたぶんスクの病院移動。
恭弥左足負傷。全て終わった頃、ディーノが駆けつける。9代目を病院へ。
12日目:大空戦。守護者強集。(ディーノは9代目&スクの病院かな?)
戦い途中で、ディーノ&スク登場。リング戦終了。
13日目:休日。山本んちでパーティ。ディーノも出席。
14日目〜?:こっからランチアとバジルが帰るまで、数日間空白。
(ランチア達がそんなに居座ってても変なので、長くとも1週間くらいと予想…(笑))
10巻から16巻まで、一ヶ月も経っていないのであった…(笑)