◆ありがちな時事ネタ。ディーノさん誕生日おめでとう!Buon compleanno !
6年後くらいです。



慌しく過ぎる日々が続く中、気を抜くと日付を忘れる事は多々あった。
しかしこの日だけは、毎年忘れた事はなかったように思う。
あの人が一番初めに自ら告げに来た時以来、時期が近づくと思い出してカレンダーを追ってしまうのだ。

自分の誕生日すらも忘れると言うのに。この日だけは習慣になっている事に、悔しそうに眉を寄せる。
しかし、そうした所で頭から追い出す事は出来なかった。今年はどうしようかな…と、つい考えてしまう。

(そう言えば、あれってまだあったよね…)

昨年から置いてあった物の存在を思い出して、恭弥は日に合わせて来て居たアジトの地下に向かった。
彼に連絡はしていないが、どうせあのファミリーは当日盛大にパーティをやるのだ。
(屋敷には戻っているはず)…と、アポも取らずに向かう事を決定すると。
恭弥は携帯を取り出し、草壁に移動の手配を伝えた。




深夜、もうすぐ日付を越えようとする頃。
ディーノは明日の準備の最終連絡を終え、自室に戻っていた。

イタリアでは自分の誕生日は、親しい人たちに自ら声をかけ祝ってもらうのが普通だ。
ディーノとて例に漏れず、明日の誕生日を控えて今日は大忙しだった。
ファミリーのボスともなれば、規模は大きく盛大だ。
明日は親しいファミリーや、街の人たちにまでも屋敷を開放し、盛大にパーティをやる事になっていた。
そんなのが毎年あるわけだから、ボスの務めとはいえ前日はくたくたになる事がほとんどだ。

部屋に戻ったディーノはさっさと部屋着に着替えると、ベッドに潜りこむ。
(そう言えば…今年は恭弥から返事が来なかったな…)
当然ディーノは明日のパーティの事を恭弥に伝えていたが、その後連絡は取っていない。
だが、特に寂しいとも思ってはいなかった。
何故なら、時間はわからないものの恭弥がこの日に顔を出さなかった事はないのだ。

今までの予想からすると、明日のパーティが終わった頃かな…と、勝手に考えて目を閉じようとしたその時。
ガチャ…、と扉ではなく何故か窓が開く音がした。

(まさか)と思いディーノは瞬間に身体を起こす。
予感は的中で、そこには黒いスーツに身を包んだ恭弥が立っていた。

「おいおい…、窓からとはまた…今年は驚かせるなぁ」
「仕方ないだろ、着いたのが今だったんだ。正面から行っても明日の事もあるし通して貰えないと思ってね」

呆れたような困ったようなディーノの言葉にも動じる事なく、しゃあしゃあと言ってのけると恭弥はベッドに歩いてくる。
来るとは思っていたが、このタイミングとは…。
ディーノはさすがに意表を突かれるも嫌だとは思ってない事に、どうしようもないな、と思った。

思い立って出発したら、この時間に着いたなんて。相手先の事を考えない恭弥らしい。
できれば明日のパーティにも出て欲しいんだがな…と、薄い望みを思いながら吐息をを漏らすと。
ぬ…っと自分の目の前に出されたワイン瓶に視線が止まり、目が寄った。

「ん?…これプレゼントか?」
「今日、飲もうと思って取ってあったんだよ」
「ありがとな…って、こらー!これ去年オレがお前に上げたワインじゃねーかっ」

恭弥から貰えるものなら何でも嬉しかったため、いそいそと手に取ってラベルを見ると。
見覚えのあるワインの銘柄と、生産年。
間違いなく去年の20歳の誕生日に上げた、恭弥の生まれ年のワインだった。
いくらなんでも自分のあげたものを返す事もないだろうと項垂れかけた時。
ベッドに座った恭弥がディーノの顎をぐいと持ち上げ、視線を合わせる。

「誰もプレゼントとは言ってない。あの時はあなたの生まれ年のワインを飲んだだろ?
だから今日はこれを飲もうと思って。だいたい、自分の誕生日に自分のワイン飲んでも面白くない」

真面目にそう言う恭弥に、不貞腐れそうだった気持ちが直ぐに解けていく。
そう言えば去年はあえて飲まずに、オレのワインを飲んだんだっけ。
あの時明確な理由は聞かなかったが、今始めてそれを聞いて心がでれでれと解けてしまいそうだった。
自分の誕生日だからこそ相手のワインを飲むなんて、何て可愛い発想だろう。

「だらしない顔…」
「仕方ない、すっげー嬉しくなっちまったんだから」
「だいたい…、あなたにプレゼントなんて必要ないだろ?毎年あげてないし」
「だよな、だからこれ出された時はちょっと驚いた。でもそーゆう理由なら歓迎だぜ?…もうすぐ日付も変わるし…」

ディーノは大事そうに恭弥のワインを撫でると、ちらりと時計を見た。
秒針が0時を指そうとした数秒前。恭弥は顔を近づけると、唇を寄せて。押し付けるようにキスをした。
唐突だったそれにディーノは目を見開き、その後秒針がどこまで動いたかわからなかったが。
間違いなく口付けをしたまま、日が変わった事を感じていた。

そして顔を離すと、恭弥は滅多に見せない柔らかい笑みを浮かべて。

「Buon compleanno…、誕生日おめでとう…ディーノ」

と、ディーノの言葉と自分の言葉の両方で祝いの言葉を囁いた。
日付が変わった瞬間に、誰よりも早く貰った言葉に、ディーノはへにゃ…と緩んだ笑みを浮かべる。
心は満たされて、暖かい気持ちでいっぱいだった。

「プレゼントなんて要らないだろ?」
「あぁ…、お前が今ここに居て、言葉をくれる。この時間がプレゼントだからな」
「……そういう事だよ」

優しい手付きで頬を撫でてくれる恭弥に、ディーノはこれ以上ないくらい幸せそうな笑みを浮かべて。
再びプレゼントを味わおうと、恭弥を抱き締めて唇を重ねた。


back


2009.0204


ぐおー短くてすみません。でもなんとしても、この日だけは何かしないと(笑)
つーか、誕生日ネタたくさん書き過ぎて、尽きてきてるんですけれども。

とにかく!!ディーノさん誕生日おめでとう〜〜〜!!いくつになっても(笑)愛してます!