◆ありがち?な時事ネタ。出会い編。



突然に連絡が入るのは珍しい事じゃない。
気紛れな恋人を持ってからと言うもの、所構わず好きに呼び出してくれる。
だから今回もそんな彼の暇潰し程度に思っていたのに。
「14日に必ず来て」というメールには首を傾げた。

日付指定というのが珍しい。言うからにはその日に何かあるのだろうが…。
しかしディーノには思い当るイベントがない。

何だっけ…と朧気のまま、タイミング良く日本の仕事があり来日すると。
ホテルに着いたのを見計らったかのように電話が鳴った。

「んだよ恭弥、タイミング良すぎだぜ」
「何回かかけて、今ちょうど繋がっただけだよ」
「あぁ、機内は切ってるし…って、そんな急ぎか?」
「言わないと1人で来るからと思ってね、今日はあの髭の人連れて来て。じゃあ後でね」

そう言って用は済んだとばかりに通話が切れる。
相変わらず人のペースを無視する相手に怒りを覚えるどころか、しょーがねぇなあ、なんて笑みを浮かべるあたり。
ディーノもすっかり絆されてしまっていた。相手の要望の意味も深く考えず。

そうして言われた通り学校に向かったと思えば、突然に屋上へと連れて行かれ。
やはり唐突にトンファーを構えて突進してきた恭弥の攻撃を鞭で寸前で受け止め、叫んでいた。

「だー!!!んっとに唐突だな!ロマーリオを連れて来いって言うから予想は付いてたが、いきなり戦いかよ!」

挨拶もそこそこに戦闘にもつれ込んだ事に当然ディーノは不満たらたらに叫ぶが、
そんな叫びを軽く無視して、不意打ちを軽々と受け止められて舌打ちをしつつ恭弥は次々と風を切り裂いてトンファーを繰り出した。

「久しぶりに会った恋人とする事かよー!?」
「いいから、本気で戦え。じゃないと…咬み殺すから」

叫びながらもひょいひょいかわす相手に殺気を漲らせて恭弥は鋭い一撃を打ち込む。
流石の速度にディーノも鞭を構え、視線も向けずに横からくるトンファーの先を止めた。
容赦のない力にびりびりと手が痺れる。

(…ったく、本当に何を考えてるかわかんねー!!)

これ以上口に出していると舌を噛みそうなため心中で呟くも、相手の気が逸れない所を見れば。
ディーノもいい加減手を抜いては居られない。
やれやれ…と心で溜息を着きながら、気が済むまで付き合ってやるか…と腹を括ってやり合いに集中していった。





「そろそろ止めとけよ、ボース?」
「ん?…あー…そうだな。おい恭弥!もうぶっ続けで6時間だぜ?いい加減に止めないか」

明らかに体力が尽きてふらふらする足元ながら、まだかかってくる相手に苦笑して、
ディーノは近づいて恭弥の腕を引き寄せ、ぎゅ…っと身体を抱き締めた。
腕の中に納まる彼も流石に疲れたのかそれ以上は暴れようはせず、持っていたトンファーを床に落とす。

すると心得たもので。ロマーリオはディーノが何も言わずともその場から去って行った。
出来た部下に心で礼を言いつつ、荒い呼吸をしている愛しい相手の髪を優しく撫でてやる。

「気が済んだか?」
「……済まない」

聞いた途端にくぐもった声が答えてディーノは苦笑する。愚問だったな…と、自分に対して。
恭弥が戦闘で気がすむ事なんて、相手をぐちゃぐちゃにするまで訪れる事はないのだ。
まだまだ負けるつもりのない自分が聞く事じゃなかった。

もぞもぞと身じろぐ相手に腕の力を緩めると、すり傷だらけの顔で見上げて、睨んでくる。
殺気は消えているものの不機嫌そうな表情に困ったように笑んで、ディーノは髪を優しく梳いてやった。
それが心地良いのか瞼を伏せて、恭弥はようやく力を抜いて息を吐いた。
それからぽつり…と呟いた言葉に、ディーノは驚いて瞬きをする。

「1年経っても…、あなたに勝てないなんて…本当にムカツク…」
「……1年?」

そんな言い方をするって事は、まさか。
当時は日を確める間もなく借り出されそのまま激動の日々に入ってしまって。
日付の事なんて気にも止めなかったが、今日の日付の意味はもしかして…。

「去年の今日。…あなたは僕の前に現れたんだ」

不思議そうに聞いてしまった自分への答えを、恭弥は溜息混じりに答えた。
ディーノが覚えていない事に対してではなく恐らくは先の言葉への不満によるものだろう。
1年。…その月日を確める為に、戦闘に持ち込んだのか。
らしいと言えばらしい恭弥の行動に微苦笑して、ディーノは寄り掛かる身体を抱き締め背を撫でる。

「普通…さあ。恋人同士で1年って言ったら、あまーく過ごすようなイベントじゃねぇ?」
「知らないよそんなの。1年間でどれだけ追いついたか知りたかっただけだ」
「……んで、結果は?」
「言っただろ。ムカツク、…って」

その言葉を現すようディーノの腹筋あたりに拳を当てて、ぐり、と押し込んでくる。
圧迫にぐえ…と呻くも諌めようともせず、宥めるように背をぽんぽんと叩いてやった。

「んとに…1年前と変わらないなぁ、恭弥は…」
「本当にそう思う?」
「……ん?」

相変わらずの性格を指して言えばすぐに帰って来る言葉に、ディーノは首を傾げた。
すると腕の中から顔を上げて、恭弥の顔が近づいてくる。
慣れてしまったその行動に、ディーノは反射的に目を閉じて、来るであろう感触を待っていた。
しかしそれは一向に訪れずそろり…と瞳を開ければ。
じー…っと見つめる恭弥の視線にぶつかる。

「……お前、なぁ」
「去年の今ごろじゃ、こんな風に触れられる自分を想像できない」

憮然として瞳を細めるディーノに僅かに口元を緩ませて恭弥は手を伸ばし、頬に触れた。
その言動に虚を付かれて目を見開く。

あぁ…、そうだ。こんなに変わってるじゃないか。

大人しく自分の腕の中に抱かれている事。
自然と触れてくる指と、僅かとは言え和らぐ表情。
見せる穏やかな瞳。出合った頃に、こんな事が訪れるなんて。
自分だって予想もしなかった。

「そうだな、変わりすぎるくらいだったか」
「あなたが…、変えた」

噛み締めるような言葉に驚いて、ディーノは目を見開く。

「確めたかった。そして…やっぱり、確信した。1年経ってもあなたは僕を、楽しませてくれる存在だよ」
「―――……あっさり、負けてたらどうするんだよ」
「あなたが僕から離れたくなければ、そうはならないだろ?」

く…、と挑戦めいた言葉を吐いて背伸びをした恭弥は。今度は本当に唇に噛み付いて離れた。
強い視線を受けて、確かに…、と思い笑みを返す。

どれだけ甘く、優しい時間が流れても。
いつまでも互いに高めあう存在でありたいと思う。
その為には…オレはずっとお前の前に立っていたいと思うから。
オレが落ちる事はないのだろう。

いつかお前がオレを越える日が来たら。そうしたら今度は…、また違う変化を求めれるだろうか。
そんな未来まで共に居れる事を祈りながら、ディーノはこの瞬間しか味わえない。
今日と言う日の暖かさを、ぎゅ…と抱き締めた。



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2008.10.14

やべ…、いよいよ意味がわからない…(笑)
無理矢理、今日に間に合わせたんで、もう推敲する力もなかったです…
かなり執筆気力が低下していてですね…(笑)
こんな記念すべき日に何言ってんだー。んと、もうすぐ復活します(笑)