◆ありがちな時事ネタ。夏祭り編。



きつく腰を締める帯に自然と背筋が伸びる。
歩き難い下駄に小刻みに歩を進めていたら、前を歩く相手はゆっくりと振り向きこちらを窺って。
そのうち手を伸ばして支えるように繋いでくれた。

長身で細身の、黒地に艶やかな赤い華をあしらった雅な浴衣を着ている彼女は、
それを着るには珍しい蜂蜜色の髪を結い横髪は緩く頬にかけて、仄かに紅を指して何とも可愛らしく綺麗だ。
手を引く彼は彼女よりも小柄とはいえ、黒の男物の浴衣をそつなく着こなし、後ろを気遣うように視線を送る。

はたから見れば甘酸っぱい初々しいカップルの光景と言えるのだろうが。

いかんせん彼女の中身は、そんな心情とは無縁だった。
遠目から見れば女性に見えるものの。知人なら正体が知れるであろう彼女は、本来はれっきとした青年だったからだ。

「きょ…、恭弥ー…。ばれるってー…、恥ずかしいってー」
「暗いし、似合ってるし、可愛いし。知りあいじゃなければばれないよ」

慣れない浴衣と下駄におぼつかない足取りのディーノは、自分の格好に情けない声で言うも。
取りつくしまもなく淡々と感想を述べられ、がくりと項垂れた。

可愛いとか言ってやがるしー…、淡々と感想を述べられたディーノは恥ずかしいやら照れるやらで眉を潜める。
滅多にそんな事をしない恭弥が手を繋いで支えてくれるのは嬉しいが。
如何せん自分の格好を忘れる事もできず複雑な心境だ。

ここ、並盛での夏祭りがある事を知ったのは先日。
ちょうどディーノが来日していて、綱吉の家で教えて貰いすぐに並盛中の応接室に向かった。
世の中は夏休みというものらしいが、ディーノは恭弥がここに居ると確信して疑わない。
閑散とした廊下を歩いて訪れた先に、予想通り恭弥は書類片手にソファに座っていた。

「恭弥!夏祭りがあるんだって!一緒に行かねぇ?」

当然その誘いの為に駈けて来たディーノは開口一番そう言うが。
恭弥の口からは「行かない」と素気ない一言。
曰く、そんな群れの中に行くなんて真っ平御免だと言う事らしい。

しかしそこはめげないディーノ。しつこくしつこく、1時間くらい言い続けて。
それでも首を縦に振らない恭弥に焦れて、とうとう禁断の誘いを告げてしまった。

「行ってくれるなら何でもすっから!」
「……ふぅん?」

つい勢いで言った事に反応を示して、にやりと笑みながら顔を上げた彼に。
ディーノはしまったー…、と顔を引き攣らせる。
しかし吐き出された言葉は戻らない。
覆す事は嫌いだし、第一そんな事をしたら恭弥の事だから余計に酷い結末になりそうだ。
覚悟を決めてディーノは「本当に?」と聞き直す相手に、こくんと頷いたのだ。

そしてその結果がこの現状である。

「何を要求されるかと思ったけど、…何でこんな事に…」

ぶつぶつと不貞腐れて歩いていると、繋いだ手が咎めるように握力を強めた。

「あなたのその姿を見たかっただけだよ。それに、手を繋いでいても違和感はない」

聊か背が高くはあるが、美麗と言える顔立ちのディーノは女装していても見栄えが良い。
着物は固い身体の線を誤魔化してくれるし、白い肌には紅が良く似合っている。
モデルのようにすらりとした姿態が黒の浴衣で妖艶な色香を放っていて。
最初見た時にその場で押し倒してやろうかと思った事は、恭弥の胸の内だけで納めている。

「僕と手を繋いで祭りに参加できるなんて嬉しいでしょ」
「………っ!」

肩越しに視線を向けて、常の意地悪なものではない柔らかい笑みを浮かべた恭弥に。
ディーノは息を飲んで僅かに頬に朱が入る。
(確信犯め…)
そんな表情でそんな事を言われて、あまつさえ握った手の感触を感じて。嬉しくないわけがないのだ。
格好には少し…いや、膨大な不満があるにせよ。
恭弥がそう言うなら違和感はないのだろうし、おおっぴらにデートできるのは確かに嬉しかった。
仕方ないか…とディーノは心を切り替え、こうなったら楽しんでやる!と不貞腐れていた頬を緩めた。





「あ、し……が痛い」
「はしゃぎ過ぎだよ、…全く」

そうして屋台などが並ぶ会場に着けば。
ディーノは珍しい光景に自分の格好などすっかり忘れてあっちこっちと恭弥を引っ張り回した。
途中あまりの群れに切れそうになるのを、目の前の嬉しそうな顔を見る事で必死に耐え。
一通り巡った頃には、ディーノは慣れぬ下駄で擦れた足に、痛みを訴えて。
溜息をつきながら続く先にある人気のない公園のベンチに座らせた。

「少し休みなよ、慣れない下駄で擦れてるんだ」
「もうちょっと回りたかったのに」
「十分でしょ?…見せてごらん、あぁ鼻緒の所で擦れてるね…」

つまらなそうに言うディーノの前に恭弥は片膝をついて足を取り、下駄を外して足の甲を眺めた。
跪いて傅くように足首に触れている姿に何だかドキ…と鼓動が跳ねる。
常にない相手の姿を瞬きもせずに凝視していると、気づいた恭弥が顔を上げ。
暫く見つめた後、にやり…と笑った。

「消毒しておこうか」
「は?……わっ、…ちょ…」

楽しげに笑う恭弥に嫌な予感を感じるも、すぐに触れた濡れた舌にびくん、と爪先を震わせた。
擦れた部分がむず痒くぴりぴりするが、それ以上に悪戯に周りまで舐める舌にぞくりと背筋が震える。
思わず息を飲んだディーノにほくそ笑んで恭弥はわざと足の裏を擽るように指を沿わせた。

「……っぁ…」

途端に揺れたつま先と明らかな声に艶笑が一層深まった。
思わず出てしまった細い声に、ばっと口元を手で覆い、見る間にディーノの頬が紅潮する。
そんな仕草は煽るだけだと言う事も知らないで。恭弥は双眸を細めると、微妙な手付きで足裏から脹脛を撫でた。

「普段は擽ったがるだけなのにね、すぐにスイッチが入るな…あなたの身体は」
「っ、この…。…っん…ちょ、…止めろって。擽ったいんだってば」
「嘘つき、声が甘いよ…」

往生際悪く言うディーノを嘲笑するように息を吐けば、き…と睨む視線が降りる。
しかし足をさわさわと撫でながら再び足の付け根にも舌を這わせれば、あっと言う間に抗議は甘く溶けていく。

「ァっ…、こ…ら、っ…こんな所で、止め…ろって」
「大丈夫だよ、同じような輩はいくらでも居るんだから」
「……へ?」

浴衣の中、太腿にまで手が伸びて来た事に流石に制止しようと手を抑えたディーノに、
恭弥は淡々とそう告げて見上げ、耳を澄ますように手を耳元へかざした。
ディーノは怪訝そうに眉を潜めるが、そのまま静かになった相手に習い辺りに意識を向ければ。

「………〜〜っ!!」
「ね?…ここはカップルの溜まり場でね。こんな祭の夜はそこかしこで同じように…」
「わーっ、言わなくていい…っ」

よくよく耳を澄ませば、微かに聞こえる女性の細いが確かに耳に入り。しかもそれは一方向からではない。
先ほどとは比べ物にならないくらい顔を赤面させて、ディーノはすく…っと立ち上がった。
痛いであろう足を気にしない彼を見上げるも恭弥も一先ずは立ち上がる。

「っ…、あのな…っ、尚更こんな所でできるか!帰るぞ」
「……どうして?みんな同じなんだから気にする事はない、現に彼らも複数居る事は気づいていて尚やる事はやってるんだから」
「馬鹿!ここに混じって男のあえ…、もとい。声が聞こえたらおかしいだろぉ!?」

恭弥に詰め寄りつつも、一度意識してしまったためあくまで小声でディーノは言い募る。
その内容に珍しく恭弥は意表を疲れたように目を見開くも、すぐに、く…っと喉奥で笑い始めた。
笑われて憮然と双眸を細めたディーノは「何が可笑しいんだよ」と至極当然な事を問う。
不貞腐れてた顔のディーノを見上げ、それはもう楽しそうに。恭弥はその答えを告げた。

「……録音でもして聞かせてあげたいね。あなたのアノ時の声は、それはもうそこらのAV女優でも敵わないくらい…甘くて高くて、可愛いんだよ」
「んな…っ」
「もう黙りなよ」

揶揄られたと思ったのか、ディーノが顔を顰めると同時に、背伸びをして。噛み付くようにその口を塞いだ。
唐突の口付けに驚いて緩んだ唇の合わせに容赦なく舌を差し込んで。
縮こまっている舌を無理矢理に絡めとる。
もがこうとしていた腕は、きゅ…と下唇を甘く噛めば力が緩み。
悪戯に喉奥から上顎をこすってやれば、鼻腔から擦れた吐息が漏れた。
濃厚なキスに溺れかけた所を見計らって恭弥はベンチのすぐ横の茂みに、ディーノを押し込んで身体を反転させ、頭を樹に押さえつける。

「痛…った。な…っ、…ちょ…。恭弥ホントに…、待てって…」
「待てない。ずっと我慢してたんだよ…あなたのその誘うような姿に、ここから家までなんて到底もたないね」
「だれが誘っ…、ぁ…っ」

寸前で手を着いて衝撃を緩和したディーノが抵抗をする前に、恭弥は腰を臀部に押し付けて手を前に回した。
浴衣の合わせから容易に届く中心を下着越しに握られ、身体が竦んで足が震える。
そのままやわやわと布越しに揉まれれば、未だ逃げようとしていた身体から力が抜けた。

「ん、…ん、ぅ…」
「声…耐えてるの?…まぁ、良いけどね…、あなたの声を聞かせたくもないし」
「…っ、だ…ったら、止めろ…っつーの!…っァ…、く…」

弄んでいた指で下着を降ろせば、すでに固くなったそれが布を押し退けて出てくる。
汚さないようにと浴衣の裾を両脇に開いて捲り、後腰の上に乗せるように纏めれば。
半ば下着がずり下がり、腰をこちらに突き出しているあられもない格好になった。

「ワオ。良い眺め」
「…ば、…か。…もう…良いから、早くシろ…」

そのまま下着を膝辺りまで降ろすと、必死に身体を支えて樹に縋りついているディーノが咎めるように言ってくる。
緩々と刺激を与えていた自身からは先走りが流れており、もはや止められる状態でもないのだろう。
制止が急かすようなものに変わって、恭弥はぺろり…と唇を舐めた。

「わかったよ、その代わり文句は聞かないから」

熱っぽい擦れた声で言うと前の先走りを指に絡ませ後ろに捻じ込む。
当然それだけでは滑りが足りなく、痛みを伴うそれに引き攣った悲鳴じみた声が漏れた。
苦痛が滲むのに気付いていながらも恭弥はぐりぐりと性急に指を掻き回した。

「い…っつ…、く…るし…って、急すぎ…」
「早くって言ったのはあなただよ。力を抜いて」
「んな…事言ったって…」

大きく呼吸をして何とか力を緩めようとするも、立ったままの状態と滑りの足りない内部にはどうしても強張ってしまう。
にも関わらず、恭弥は狭い内部を好きに蠢かしてから抜いてしまった。
そしてなにやらごそごそと後ろで動く気配がする。
怪訝に思って肩越しに視線をやれば、普段は目にしない光景が目の端に映って目を見開いた。
既に充分屹立させている相手自身に装着されている半透明のゴムの膜が、見慣れていないせいか酷く卑猥に見えて唾を飲み込む。

「恭弥…、それ……」
「後始末も出来ないからね、嫌いだけどオイルも塗ってあるし滑りも良くなるだろ」
「…普段つけない癖に、用意が良いな…おま…っ、…ぁっ…ァ、―ッ」

持ってたのかよ…と突っ込みを入れる前に、あてがわれた先端が挿入してきて。
ディーノは必死で樹にしがみついて身体を支えた。
確かにゴムに予め塗られているオイルは潤滑油の役割もあり、さほど痛みも感じずに中に潜り込んで来て。
一枚の隔たりがあるとはいえ充分熱さが伝わるモノの挿入にディーノは声を耐え切れず、高く喘いだ。

「……ふ、…負けてないよ。あなたの声…、やっぱりイイ」
「ぁ、ぁ…、うるさ…ぃ、…っァッ…、く…、っン…」
「髪の毛結って…、綺麗な着物を着て…後ろから犯してるとまるで女の子を抱いてるようだね」

紅を差した白い顔が肩越しにちらちら見えて、壮絶に艶かしく色香を放つディーノに恭弥は興奮を打ち付けるよう埋め込んだソレを抽挿始めた。
仕方ないとはいえ、間にある感触が邪魔でしょうがないが。それを溶かしてしまうように摩擦を繰り返す。

「んっ…ぁ、…おん…なの…が、良いの…かよ…っ」

恭弥の言葉を聞いて恨めしそうに涙目で睨むディーノに「まさか」と一言で返す。
それを示すよう放っておいた前に手を伸ばすと、男の象徴であるそれを包んで揉みしだいた。

「ァッ…!ぁ、っぅ…ン…っ…、ふ…ぁ」
「“あなた”である事が…最優先だよ」

自身の快楽に高く甘く上がる声にぞくぞくと痺れを感じながら、恭弥は何度も抜いては抉って。
同じタイミングでディーノの前を擦り続ける。
崩れそうな足は恭弥との繋がりで留められ、がくがくと膝を震わせながら懸命に保っていた。
焦らす事のない突き上げに恭弥もディーノもすぐに高みへと上り詰めれば。

「――っぁ…!…ぁ、ぁ…っァッ…!!」

一層甘く高い声で鳴いて、手の平に白濁を噴き出させた。
少し遅れて膨張した中のモノが弾け、急速に力が失せる。

「……………、やっぱり好きになれないな。コレは」

確かに達したものの、恭弥は不満げに言うと。ずるり…と中のを抜き出して自身を覆うものを外す。
引きずり出される感触に悲鳴を上げて、達した余韻に痙攣している腰を再び掴めば。
自身を何度か扱いて半ば勃たせてから、今度は直接そこへ捻り込んだ。
先ほどまで埋め込まれていた内部はもう緩んでいて、またこびり付いていた恭弥自身の精で抵抗もなく入って行く。

「ひ…、ぁ…、…ヤ……っだ。恭弥…、ダメだって…っ」
「やっぱりあなたのナカに出さないと気持ち良くない。もう1回頑張って」
「…ぁっ、ぁァ…、…ッン、く……、このバカやろ…ぉっ…!!」

勝手な事を言う恭弥に悪態を着きながらも、直接触れる内部の熱さに先よりも強い快感が満ちるのを感じていた。
絶頂に達したあの瞬間。最奥に熱い感触を受けられなくて物足りなさを感じたなんて。
口が裂けても言えないな…と。再び翻弄されていく快楽の波の中で、ディーノは朦朧と思っていた。





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2008.08.31

わー、もうすでに時期はずれ。ぎりっぎり(笑)の上、祭がないがしろに…(爆)
女物の浴衣を着せたかっただけなんですが。

暫く前から書き初めてたんですが、ネタ的にかなり他所様で見た感じで被っている気がして本当にすみません。
ネタを絞り直すことができませんでした……;;見逃して頂けると有りがたく。

しかしまぁ、ただのエロになってしまったのは否めない…(笑)
しかも中途半端な…!!これ地下にすべきだったかなー…とも思いましたが。
さらりとエロは済ませたから良いとしましょう…、ねっちょり書いた方がきっと喜ばれるんでしょうが…(笑)
一応時事ネタなので。…だったらエロ入れるな!と言う感じです。年齢制限申し訳無い。

つか、最近おかしいです、うちの雲雀たん。
可愛い、可愛いって言いすぎなんですよ…(笑)頭でも打ったかかいな。

以下。屋台巡り中のおまけ。



「何だこれ、チョコバナナ?美味そうだな、買っていい?」
「―――……ホワイトチョコのなら買っても良いよ」
「へ?何でホワイト限定なんだよ、オレ普通のが好きなんだけど」
「嫌なら駄目」
「…ま、いっか…良くわかんねーけど」



食べる姿を無表情で視姦してる恭弥さんなのでした。