「なぁ…、恭弥。一言くらい言ってこないとまずいんだけど…」

廊下を歩いていたところを、唐突に並んでいた部屋へ連れ込まれ。
そこから繋がった通路をずんずんと歩いて行く恭弥に、ディーノは困ったように声をかける。
彼はちらり、と肩越しに視線を送っただけで、何も返答はない。

そんな彼を見るのはかれこれ3ヶ月ぶりくらいだろうか。
久しぶりに会えて嬉しくて、つい腕を引っ張られるまま着いて来てしまったが。

自分では来た事のない裏通路まで進む彼に、ディーノはちょっとヤバいかな、と思い始めていた。
何せ綱吉のところから、部下に何も言わずに来てしまったのだ。
すぐに戻れる所ならともかく、この広いボンゴレ屋敷内で人目に着かなくなると。部下が心配するだろう。

「なー…、せめて電話取って良いか?さっきから鳴ってるんだけど」
「それ、緊急?」
「……いや、探してるだけだと思うけど」
「なら。取ったら咬み殺すから」

スーツの胸ポケットからの振動で、大体誰の電話かわかる。
このリズムだと待機させていた部下だから、探しているだけだと思う。
ここでロマーリオか中枢の部下の着信だったら。聞くまでもなく取っているが。

「何で出たら駄目なんだよ…」
「繋がったら、あなたの居場所が悟られる。邪魔されたくない」

ふいに立ち止まって振り返り、じ…っと見つめる黒い瞳に。ディーノはドキ…と、鼓動を揺らした。
固まってしまったディーノから顔をそらし、恭弥は奥まった部屋に入る。

「別に、こんな奥の部屋じゃなくても。二人で居て邪魔する奴はいねーと思うけど」
「……まだわからないの?」
「へ?……う、わっ!!」

そう言いつつも、取りあえず中ほどまで入ったディーノを、恭弥は突き飛ばして、ソファに押し倒した。
あっとゆうまに反転した視界に、ディーノは目を白黒させて覆いかぶさる恭弥を見上げる。

「ま、まさか…お前、今から…」
「あなたの想像通りだよ。大人しくしていて」
「……って、できるか!!こんな昼間っから何、盛ってんだ、お前はぁー…!!」

じたじたと下から逃れようとする身体を押さえつけて、恭弥は構わずディーノに口付けをする。
出会ってから5年。未だ身体つきは華奢とはいえ、最近の成長は目覚ましく。
のしかかられて押さえられると、容易には退けられなくて。柔らかく被さる唇に捕えられる。

もちろん、本気で抵抗すれば逃れるとは思うが。
そんな事をして傷つけるかも、と思ってしまうと、ディーノは出来なくなってしまうのだ。
勝負では散々、互いにやり合ってはいたが。それとこれとは話が別だった。
傷とは、身体だけの事じゃないのだから。

「あなたは…、欲しくないの?」

恭弥は濡れた唇を離して、ディーノの頭を包み込むように両脇に腕を置いて被さり。至近距離で囁く。
真剣な声に、ディーノの心が揺れる。

「……恭弥…」
「どうせ、夜になる前にあなたは帰るんでしょ?だったら今しかないじゃない」

先ほどまでの冷たい色から一変して、熱っぽい感情を浮かべた瞳に、ディーノは身体の奥が熱くなるのを感じていた。

「わざわざ声の漏れない場所まで来てやったんだ、大人しく付き合いなよ」
「恭弥…で、も……っ!…ぁっ、待…」
「もう待てない」

ぐり…と、ズボン越しにディーノの中心を握って、短くそう言うと。恭弥はそのまま揉んでくる。
そこに刺激を与えられてしまえば、反応するのは仕方ない。
ディーノだって3ヶ月もご無沙汰だったわけで、溜まっていないわけじゃないのだ。

「ぁっ、ぁ…、ぅ…、止め……」
「固くしてるくせに…、まだ制止するつもり?」
「んっ…、ぁ。だ…って、あいつら…待たせて…」
「……大丈夫だよ。僕が来ている事は沢田綱吉が知っている。想像は、つくだろう?」
「って、…こんなの、想像つかれても…困る…」

恭弥に押し倒され、あまつさえ行為を開始されてしまった現状に、ディーノは項垂れたい気分だが。
触れる手に呼応して熱くなる身体が、もうどうにも止まらない事を、感じていた。
諦めたように強張りを解いた身体に恭弥はほくそ笑んで。
ディーノのスラックスのチャックを下し、ずるり…と下着ごと降ろす。

窓から差し込む陽光は明るく、反応を始めて濡れてきた先端を光らせていた。
その明るさを直視したくないのか、ディーノは両腕で顔を覆うが。
恭弥は構わずに直にソレに触れると、性急に扱き始めた。

「んっ、…ん…ぁっ」
「反応いいね。一人でシてなかった?」
「あっ…、ァッ…、…っん…」

少し上下しただけで屹立し、先走りを流し始めるモノを見つめ、恭弥は欲情した声で呟く。
揶揄るような言葉に「する…わけ、ね…だろ」と、腕の隙間からディーノが睨んで来て。
恭弥は、く…と、口端を吊り上げていた。

「そう。僕は…シてたよ」
「……っ、お前…」
「あなたの、ここを…想像して…」
「っんん!!アッ…!」

掠れた吐息で熱っぽく言うと、恭弥は指を、つ…と下に滑らせて。先走りで濡れた指先を挿入する。
暫くぶりの感触にディーノは息を詰めるが。同時に擦られる前の快感に、すぐに身体の力が抜けていく。

「……忘れてないみたいだね、ここは。すぐに絡みついてきたよ…」
「あっ…ぅっ、…んな…事、言う……なっ」

少しずつ指を深く挿入し増やして。ぐにぐに…と内部を掻きまわす感触は。
確かに久し振りだったけれど、身体に沁みついている慣れたものに、拒否反応はない。
解すように中を巡る指に、ディーノ自身も固く張り詰めていて。
中から快感を感じている事を物語っていた。

「んっ、ぁ、ぁっ……、ふ…、ァ」
「想像よりも、ずっと熱い。やっぱり本物が良いね…」

ディーノの甘く蕩ける声に、恭弥が唾を嚥下した時。

プルルルルル、プルルルルルと、機械的な音が流れた。

唐突に響いた電子音に、ディーノの身体がびくん…っ、と大きく震える。
そして恭弥は、明らかに不機嫌そうに大きく舌打ちをした。

「……この音、沢田からの緊急回線だ」
「えっ!!…って、それは出ねーとマズいだろ!!」
「――…、まぁ…僕は構わないけど」
「え?…っあ、ちょ…っ」

中に入り込んでいた指はそのままに、恭弥は反対の手で胸ポケットから携帯を取り出す。

「ま…っ、指…!!止めろ…って、っぁ…、こ…らっ!!」
「………出た方が良いんでしょ?」

く…、と喉奥で笑う恭弥に。(このやろぉ…!!!)と睨みつけるが。中で蠢く指に力が抜けてしまう。
そうしている間に、恭弥はなんと携帯の通話ボタンを押してしまったのだ。

「何か用?」


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2008.05.01